毎日新聞で「ミラクルな紙面」を発見 「もはや野党とは言えない」与党に接近、国民民主・玉木代表をバッサリと…

ここ1か月の新聞紙面でもっとも可笑しかった出来事を紹介します。こんな質問がありました。
「国民民主党は与党入りするの?」
毎日新聞「なるほドリ」の質問タイトルでした(3月23日)。なるほドリとは日々のニュースについて質問をする黄色い鳥のキャラクターのコーナー。この日は冒頭からグイグイきた。
「国民民主党が与党に接近しているといわれているね。どういうことなの?」
なるほドリよ、皆が薄々気づいていることを大声で叫ぶんじゃない。
回答担当の記者は「政府の2022年度当初予算案に賛成したため、そうした見方が広がっています」「野党が賛成することは通常ありません」「国民民主の賛成は極めて異例です」と答えた。
玉木代表は「明確に野党だ」と主張したが…
なるほドリは続ける。
Q どうして賛成したのかな?
A 国民民主は原油価格が高くなった対策として、ガソリン税を軽くする「トリガー条項」の凍結解除を主張しており、同党によると、玉木雄一郎代表に岸田文雄首相が凍結解除を約束したというのが大きな理由です。
なるほドリはさらに問う。「凍結解除は実現しそうなの?」「本当に与党入りするの?」
ああ、もうやめてあげて。
この「難問」について記者はどっちにもとれる回答をしていた。
《玉木氏は「明確に野党だ」と与党入りを否定しており、首相も「与党の枠組みは今後も変えるべきでない」との立場です。ただ、与野党内では「夏の参院選後に連立入りするのでは」という観測が出ています。》
なるほドリよ、社説を見ろ
まぁ今言えるのはこれぐらいかなぁと思いながら紙面をめくると社説が。そのタイトルがすごかった。
『自民に近づく国民民主 もはや野党とは言えない』
なるほドリよ、社説を見ろ、社説を。うしろ、うしろ! 社説は国民民主の態度をぶった切っていた。
《ガソリン高対策は他の野党も求めてきた。なぜ国民民主だけが、これを理由に予算に賛成したのか。玉木氏が与党に近づく口実に利用しているように映る。》
バッサリ。
《半年もたたずに与党に接近するのは、投票した有権者への裏切りではないか。》
ひーー。
《玉木氏は「我々は明確に野党だ」と繰り返すが、実際の行動はその言葉からかけ離れている。野党の立場を忘れ与党にすり寄るようでは、有権者は戸惑うばかりだ。》
わかりやすい。なるほドリの疑問を社説が答えてしまうという、同じ日の新聞ミラクルでした。
「玉木氏と親しい野党議員」が語ったこと
そのあと4月4日の毎日新聞にはこんな記事があった。
『岸田政権きょう半年 際立つ「麻生-茂木」ライン 党内にくすぶる不満』
岸田政権が7月の参院選を乗り切るために自民党の麻生太郎副総裁、茂木敏充幹事長の動きが目立つという記事。さりげなく大事なことが書かれていた。
《麻生、茂木両氏が昨年から進めたのが、野党の「分断」だ。ガソリン価格の高騰時に税の一部を引き下げる「トリガー条項」の発動を主張する国民民主党と水面下で調整を重ねて距離を縮め、国民民主は22年度当初予算への賛成に回った。》
国民民主の行動について種明かしされていた。この件、タブロイド紙は何か書いてないだろうか。タブロイド紙の下世話さはこういうときに重宝するからだ。
すると、夕刊フジ掲載の政治評論家・鈴木棟一氏のコラムが生臭かった(3月31日付)。与党への傾斜を強める玉木氏をどう見るかというお題に「玉木氏と親しい野党議員」が語っていた。
「玉木氏に、戦略は特にはないようだ。もともと、大戦略をつくれるような人ではない。政局観もない。自分のことを褒めてくれる人の方を向き、接近していく」
では、自分のことを褒めてくれる人とは?
「自民党の麻生太郎副総裁だ。麻生氏は連合を取り込もうとして、玉木氏をおだてているようだ」
あ、ここで麻生太郎の名前が。自民党の狙いは連合だった。そのトリガー(引き金)として玉木氏がおだてられていたのか。生臭い話が得意なタブロイド紙は一般紙と併せて読むとわかりやすい。
「国民民主党の終わりの始まりだ」
ではもう一つ、併読が面白かった件を紹介しよう。与党に近づく玉木氏に対して自民党閣僚経験者がこんなことを言っていた。
「過去の社会党や新自由クラブ、新党さきがけなどを見ても、うちにすり寄るようになったらその党は衰退する。今回の動きは国民民主の終わりの始まりだ」(毎日新聞3月9日)
すると夕刊フジは「(玉木氏は)国民民主党はやがて『消える』可能性もあると分かっているようだ。最悪の場合、玉木氏単独の自民党入りもありそうだ」というベテラン記者のコメントを載せていた(鈴木棟一コラム3月12日付)。
え、党の連立より玉木氏単独の自民党入り? いかにもタブロイド紙的な展開予想だが、しかし玉木氏が永田町の一部では「こう見られている」「そう思われている」という声は一般読者にとって貴重な野次馬情報だ。
同コラムでは、玉木氏は大平正芳元首相と地元が同じことから、「財務官僚から国政を目指した点でも、玉木氏と大平元首相は同じ。玉木氏は『大平直系』を自負している」(2月25日付)という分析も。
一方で《「大平家側は『曲がりなりにも野党の政治家が、大平の名を自分のために使うのはどうなのか』と複雑な思いを抱いています」(自民党中堅議員)》(週刊現代3月26日号)という記事もあった。「自称・大平の玉木は与党に入りたいのか」というツッコミはこういうところからも来るのだろう。
「#国民民主党にワクワク」と投稿したが…
それにしても自民党側は国民民主との接近は「野党の足並みを乱すことができる」(毎日新聞3月9日)という視点だけで歓迎しているのは権力側の余裕か冷徹か。まさに麻生&茂木が進めた野党分断工作にみえてきた。
そして先週はこんな展開に。
『玉木代表「トリガー先送り」苦悩 国民民主、与党との交渉に狂い』(朝日新聞4月13日)
党内では「玉木氏への批判が出る」(参院議員)との声が上がり始めているという。
そういえば年明け、玉木氏は週刊文春に「ワクワク玉木」と呼ばれていた(1月27日号)。岸田首相への質問の募集をツイッターで「#国民民主党にワクワク」として投稿したところトレンド入り。玉木氏は喜んだが投稿内容を見ると「ワクワクしません」「#国民民主フラフラの間違いでは?」とおちょくる声も多かったと文春は書いていた。
あれ以降、「ワクワク割」という言葉が登場しても、私はワクワク玉木のほうを先に思い出してしまうようになった。フラフラではなくワクワクする日は来るのか。適度に注目したい。
(プチ鹿島)