昭和初期に旧京都帝国大(現京都大)の人類学者が、沖縄にある中世の墓所から遺骨を持ち出し、返還しないのは違法だとして、子孫に当たるとする地元住民らが京大に遺骨の返還などを求めた訴訟の判決で、京都地裁(増森珠美裁判長)は21日、「原告は遺骨の返還請求権を有しない」として請求を棄却した。一方、遺骨の処遇については「関係機関を交えて返還の是非や受け入れ機関を協議し、解決に向けた環境整備を図るべきだ」と付言した。
原告側は控訴する方針。研究機関による遺骨の収集と保管の是非を巡る、初の司法判断とみられる。これまで、大学の研究者に持ち出されたアイヌ民族の遺骨返還を求める同種訴訟が複数起こされたが、返還を前提に和解が成立してきた。
墓所は沖縄県今帰仁(なきじん)村にある「百按司墓(むむじゃなばか)」。1429年に琉球統一を果たした第一尚氏(しょうし)の貴族らが葬られたと推定されている。原告らはその子孫などとして、京大総合博物館(京都市)に保管された26体分の返還を求め、2018年に提訴していた。
判決は、京都帝大の学者が1929年と33年、百按司墓から計50体以上の遺骨を研究目的で持ち出したと認定した。原告の一部は第一尚氏の子孫とも認めたが、沖縄の慣習に照らすと「墓を参拝しているからといって、『祖先の祭祀(さいし)を主宰すべき者』に当たるとは認められない」として原告側の主張は退けた。
さらに「遺骨は信仰対象であると同時に、学術資料的・文化財的価値も有する」として、京大側が遺骨を保管する状況についても違法性はないと結論付けた。
付言では、原告らを「琉球民族」と表現し遺骨を墓所に安置したいと願っていることについて「心情にはくむべきものがある」と理解を示した。一方で、原告と京大の間だけでは解決できない問題だとして、幅広い協議や環境整備を求めた。【藤河匠】
判決の骨子
・原告は遺骨の返還請求権を有しない
・原告らが琉球民族として祖先の遺骨を祭りたいとの心情はくむべきものがあるが、遺骨の処遇は原告と被告のみで解決できる問題ではない。関係諸機関を交えた協議で、解決に向けた環境整備が図られるべきだ
・被告による遺骨の保管は死者への畏敬(いけい)追慕の念を甚だしく害する不適切なものと認められない。学術資料的・文化財的価値のある遺骨の散逸などを防止する目的も不当といえず、不法行為は成立しない