北海道・知床半島沖で乗客乗員計26人が乗った観光船「KAZU Ⅰ(カズ ワン)」が浸水した事故から3日目となった25日も、地元の漁協関係者や観光船運航業者が行方不明者の捜索活動に参加した。事故から刻々と時間が過ぎる中、進展しない救助作業に焦りを募らせる声も聞かれた。
地元の漁師らは25日早朝から、事故現場付近の捜索を行った。だが、午後から波が高くなるという予想があり、捜索を早めに切り上げる漁船も多かった。午後3時に帰港した馬場勝義さん(49)は「波があって海面が見にくかった。時間帯によって異なるが、波のうねりがかなりあった」と語り、「何も見つけられなかった。発生からもう3日目。早く助けたい」と悔しげに話した。
「KAZU I」を運航していた「知床遊覧船」の同業者も捜索に協力している。ある同業男性は「全員見つかるまで捜索に協力したい」と話す一方、「今回の事故は驚いたし、すごく悲しい。観光船全体が危ないと思われるのは困る」と懸念した。天候の悪化が見込まれる状態で23日に「KAZU I」が出航したことについては「この日はシーズン前で他社は出航予定がなく、お客が集まると思ったのだろうか。とても海に出られる天候ではなかった」と振り返り、「(安否不明の)船長と甲板員は地元の人ではなく、同業者の中でも交流は少なかった」と語った。
また、別の同業男性は「(知床遊覧船は)新型コロナウイルス禍の影響で観光客が減った中で従業員が代わったようだ」と話す。「船長も甲板員も来てまだ日が浅く、知床の海や風についてよく知らなかったことが事故原因になったのではないか」とし、事故時の状況について「(知床岬までの)行きは追い風だったのが、帰りは正面から波を受けて進まなくなったのか」と推測した。
海上保安庁や国土交通省北海道開発局によると、「KAZU I」が出航した23日午前10時ごろのウトロ付近の波の高さは0・3メートル程度だった。しかし、正午ごろから徐々に高くなり、同船が無線で「沈みそうだ」と言っているのを傍受した同業者が118番した午後1時13分ごろには、2メートルほどに。同船から「船首部分に浸水し、沈みかかっている」「エンジンが止まっている」と118番があった同18分ごろには3メートル近くに達していた。同船の乗員から知床遊覧船に「船が30度ほど傾いている」と連絡があった午後2時ごろには、3メートルを超えていた。
3歳女児は東京在住、両親も安否不明
25日に死亡が確認された加藤七菜子さん(3)=東京都葛飾区=の遺体は同日早朝、北海道斜里町内に設置された遺体安置所に運び込まれた。
同町の北雅裕副町長によると、両親と一緒に旅行中だったとみられるという。北副町長は両親はまだ安否が不明だと明らかにし、「(加藤さんが亡くなったことは)非常に残念。身元の確認は祖父母が来ることになる」と静かに語った。【山田豊、最上和喜、国本愛、堀智行、木下翔太郎、真貝恒平】