北海道・知床半島沖で観光船「KAZU Ⅰ(カズ・ワン)」が消息を絶った事故は25日で発生から3日目を迎えた。新たに子供1人の死亡が確認されたが懸命の捜索にもかかわらず、発見は11人にとどまる。安否不明となっている乗客の家族らが焦燥感を募らせる一方、死亡が確認された子供の祖父母は無言の対面を果たし、悲しみに暮れた。
斜里(しゃり)町関係者によると、祖父母は遺体安置所となっている同町の「B&G海洋センター」で、孫の身元を確認。ひつぎに眠る孫を目にして静かに名前を呼びながら涙を流したという。安置所には献花台も設置され、午後には若い女性が花束を持って訪れ、沈痛な面持ちで手を合わせた。
海上保安庁や国土交通省など行政側は乗客の家族らに向け、前日に続いて説明会を開催した。
午前9時ごろからの説明会には、家族ら25~30人が出席。行政側から捜索状況や相談ダイヤルを設けたことなどが伝えられた。国交省の担当者は終了後、「家族からは情報提供を求める声が上がった」と厳しい表情で語った。
午後1時半ごろから行われた説明会では、家族の一部が夜を徹しての捜索に感謝し、「(捜索状況を)よく理解できた」と語る場面もあったという。
一方、運航会社「知床遊覧船」の社長はこの日午前の説明会に出席したものの、家族らにきちんとした説明ができず、改めて別に説明する場を設けることになった。ただ、午後の2回の説明会には姿を見せなかった。
26日も説明会は実施予定だが、社長は出席しない見込みという。国交省関係者は「社長には再三、記者会見を開くように伝えているが、いつ開くか分からない。電話もつながるときと、そうでないときがある」と困惑した様子で話した。