10カ所以上転々「被害直視を」=原発避難訴訟で原告陳述―最高裁弁論

東京電力福島第1原発事故で福島県内の別の地域や近隣県に避難した住民ら約3550人が、国に原状回復と慰謝料を求めた訴訟の上告審弁論が25日、最高裁第2小法廷(菅野博之裁判長)で開かれ、原告側と国側が意見を述べ結審した。
弁論で原告側は、事故当時、福島県富岡町に住んでいた深谷敬子さん(77)が意見陳述。「体育館や親族宅、復興公営住宅など10カ所以上を転々とし、気が休まる時はなかった」と語った。
美容師として働いてきた深谷さんは、60歳で自宅敷地に店を開いた。招いた友人らとのおしゃべりが生きがいだったが、事故で自宅や店は朽ち果てたという。
二審の裁判官がかつての自宅や店を視察した上で国の責任を認める判決を出したことに触れ、「苦労が少し報われた気持ちになった」と振り返った。最高裁の裁判官らにも「被害に正面から向き合って判断してほしい」と訴えた。
国側は、2002年に政府機関が巨大地震を予測した「長期評価」に基づく津波の予見可能性を否定。防潮堤を設置するなどしても原発敷地内への浸水は防げなかったと主張した。
閉廷後に記者会見した深谷さんは「どれだけ大変な思いをしてきたか知ってほしくて陳述した。口では言えないほど大変な11年だった」と語った。原告代理人の馬奈木厳太郎弁護士は「歴史的な判決になると確信している」と述べた。
[時事通信社]