24歳容疑者、外貨建て振り込み27回 残高焦点に 阿武町誤入金

山口県阿武町の誤入金を巡って同町の無職、田口翔容疑者(24)が電子計算機使用詐欺容疑で逮捕された事件で、田口容疑者は誤入金があった4月8日から同18日までの間、オンライン決済代行業者1社に対し、外貨建てとみられる振り込みを27回繰り返していたことが代理人弁護士などへの取材で判明した。当時の為替相場から1回当たり1万ドル相当だったとみられる。
田口容疑者は誤入金の4630万円を決済代行業者とみられる3社の口座に移し、オンラインカジノに使ったと説明している。町は一部の口座について差し押さえの仮処分を申し立てており、こうした口座に残金があるかが回収に向けた焦点となりそうだ。
代理人弁護士などによると、田口容疑者は4月8日から同18日まで、34回にわたって出金手続きを繰り返した。そのうち5回は買い物時に口座から代金を引き落とすデビット決済だったが、その他の29回はオンラインカジノの決済などに使われる決済代行業者3社への振り込みだった。
27回にわたって振り込まれたのが3社のうちの1社で、振込額は計約3592万円。1回当たり約125万~約134万円で「125万6441円」などと毎回端数があり、当時の為替相場からドルやユーロといった外貨建てで1万ドル相当が振り込まれたとみられる。他の2社への振込額はそれぞれ300万円と400万円の各1回で、400万円の振り込みが今回の逮捕容疑になった。
町は誤入金の4630万円が移されたことを確認した二つの銀行の口座について、差し押さえを求める仮処分を4月28日に申し立てた。ただ、田口容疑者は県警の調べに「誤って振り込まれたお金と分かっていて別の口座に移し、ネットカジノで使った」と供述。代理人弁護士にも「複数のネットカジノで全て使った」と説明しているという。
IT業界に詳しく、ITジャーナリストとして活動する三上洋さんによると、オンラインカジノの決済代行業者の中には入金の上限を1万ドルとしているところもあり、田口容疑者はそれに近い金額を頻繁に振り込んでいた可能性がある。
三上さんは「カジノで熱くなって上限めいっぱい入金したのかもしれない」と推測する一方、「決済代行業者かオンラインカジノ側の入出金明細を見ないと、本当にカジノで使い切ったかは分からないはずだ。賭けていない可能性もある」と指摘する。ただ、振込先に残金があったとしても、決済代行業者やオンラインカジノの拠点が海外にあれば「取り返すのは難しいだろう」とみる。【福原英信、河慧琳、近藤聡司】