山口県阿武町が誤って振り込んだ給付金4630万円の一部を使用したとして、電子計算機使用詐欺容疑で無職の田口翔容疑者(24)が逮捕された事件で、代理人弁護士は町による給付金返還の請求を受け入れる「認諾」の手続きをしたと明らかにした。田口容疑者は「全額をオンラインカジノで使った」と供述しており、仮に自己破産しても免責されない可能性があるという。
町は容疑者に給付金や弁護士費用など約5115万円を求めて山口地裁萩支部に提訴したが、代理人は、給付金返還について認諾の手続きをしたと表明。弁護士費用などは争う方針を示した。代理人は「本人は少しずつでも返済したいと言っているが、現状では資産はない」と述べた。
元東京地検特捜部副部長の若狭勝弁護士は「現状の田口容疑者には資産や収入を見込めず、この先、再就職して収入を得るようになった場合、町は毎月一定額の返済を求めることになるのだろう。最大で給与所得の4分の1まで差し押さえられるが、仮に毎月5万円ずつとしても70年以上かかり、全額返済は現実的ではない」とみる。
一般に多額の債務を背負った場合、自己破産などの手段もあるが、「ギャンブルによる借入金は、原則として債務の免責は認められない」と若狭氏。
4630万円に税金はかからないのか。若狭氏は「不正に取得した収入と判断すれば課税対象になるが、今回は阿武町に返済すべき債務だと判断されるのではないか。その場合税金はかからない」という。
今後の捜査について若狭氏は「最初の逮捕容疑にあたる400万円を除き、残りの金額をどう引き出したかが焦点だ」と解説する。起訴された場合、「検察側は執行猶予をつけず懲役3年の実刑を求めるのではないか」との見方を示した。
軽率な行動の代償は重くなりそうだ。