社長が「運航管理の経験3年以上」と虚偽の届け出…国の監査「改善意識が全く見られない」

国土交通省は24日、事故後に実施した運航会社「知床遊覧船」に対する特別監査の結果を公表した。海上運送法に関する違反が19項目に上り、昨年の指導事項でも違反が確認された。国交省は「再び重大な事故を起こす蓋然性が高い」とし、6月14日に聴聞を行い、同社の事業許可の取り消し処分を行う方針。同法に基づく行政処分で最も重く、事故を受けての許可取り消しは初となる。
特別監査では、事故当日の違反として、出航時に強風、波浪注意報が発表され、風速15メートル以上、波高2メートル以上となる恐れがある中、運航管理者の桂田精一社長(58)が、安全管理規程で定めた運航中止基準(風速8メートル以上、波高1メートル以上)に反して出航させたと認定。こうした判断の結果を記録に残さなかったことも違反とした。
さらに、運航中には、事務所に常駐する義務がある桂田社長が不在で、代理の運航管理補助者も配置していなかったと指摘した。
一方、事故前からの違反も認定した。
安全管理規程では、船との連絡手段に衛星電話、業務用無線、携帯電話の3種を定めていたが、いずれも不備があった。衛星電話は昨年11月頃に故障したまま放置され、業務用無線は、実際には業務使用が認められないアマチュア無線で、事務所のアンテナも破損していた。
豊田徳幸船長(54)が船に持ち込んだKDDI(au)の携帯電話は、航路の大半が通話エリア外で「実際には通信できなかったと推測される」とした。NTTドコモの携帯も会社から支給されていたが、当日は事務所に置かれていた。
さらに、桂田社長が昨年3月、運航管理者に就任する際、資格要件の「運航管理の3年以上の実務経験」を満たすとして届け出ていたが、聞き取りの結果、虚偽だったと判明した。
監査結果では、安全統括管理者でもあった桂田社長について「職務を理解せず、法令や安全管理規程への理解も不十分で、遂行を怠っていた」と言及。国交省が昨年6月の特別監査でも、今回と同じ、航行中の連絡体制などについて指導していたことを踏まえ、「安全確保の仕組みを著しく形骸化させ、改善意識が全く見られない」と指弾した。