シカによる食害で危機 「絶滅リスク」の植物、4倍に 群馬

群馬県内の野生生物の絶滅リスクを評価した「県レッドデータブック」(植物編・動物編)が10年ぶりに改訂された。ニホンジカによる食害増加を受け、動物食害(踏み荒らし、掘り返しを含む)が絶滅リスクになっている植物は163種に上り、前版(12年)の42種から約4倍となった。リスク順位も14位から2位に急上昇した。【増田勝彦】
動物食害については今回から、特に影響が大きくなっている「シカ」(126種)と、「シカ以外」(49種=一部重複)に分けた。絶滅危惧ⅠA類(ごく近い将来、野生での絶滅の危険性が極めて高い種)は257種あるが、そのうちニホンジカの食害がリスクとなっているものが66種あると評価した。
山地の草原で40センチほどの草丈になるカイフウロ(フウロソウ科)は数センチの丈で開花しているものもあり、過去10年で減少率が急上昇。県内が北限のテバコモミジガサ(キク科)も開花個体が急減。ともに絶滅危惧ⅠA類の評価となった。
また「森の妖精」と呼ばれるレンゲショウマ(キンポウゲ科)はこれまでリストへの記載がなかったが、ニホンジカの多い地域で開花個体が極端に減少していることから、絶滅危惧Ⅱ類(絶滅の危険が増大している種)として新たに評価した。
一方、ニホンジカが忌避するオオヤマカタバミ(カタバミ科)や、クサタチバナ(ガガイモ科)などは、他種が衰退した場所で増え、「絶滅のおそれが減少した」とした。
県立自然史博物館の大森威宏さんによると、ニホンジカの食害は1990年ごろに日光白根山周辺などで確認されるようになり、2000年代には尾瀬や赤城山、足尾山塊などで深刻化。近年は武尊山、玉原高原、宝川温泉周辺まで広がっている。県南部では00年代に上野村や荒船山周辺で目立つようになり、現在では御荷鉾山から下仁田町、甘楽町、藤岡市の山間部まで広がっている。生息地域の拡大だけでなく、以前は食害が確認されていなかったヒイラギソウ(シソ科)やレンゲショウマなども、ニホンジカが食べるようになっているという。

「県レッドデータブック2022年改訂版」は、植物で5種を新たに「絶滅」と評価。より高い危険度への移行が65種、低いものへの移行が65種、新たな追加が51種。動物では、昆虫類6種を新たに「絶滅」と評価、26種を新たに追加した。
県庁2階県民センターで販売。今後、県立自然史博物館ホームページにも掲載する。