欧米を中心に患者の確認が相次いでいる感染症「サル痘」を巡り、サル痘にも有効とされる天然痘のワクチンが注目されている。すでに各国が確保に動き出しているほか、国内でも以前からテロ対策を目的に生産・備蓄している。政府が、ワクチンの活用方法について検討を進めている。
サル痘は発熱や発疹、リンパの腫れなどが見られる、根絶した天然痘と似た感染症だ。天然痘は人が宿主動物だが、サル痘はネズミやリスなどの仲間がウイルスを保有するとされ、サルや人にも感染する。一般的には感染力が弱く、発疹部分や体液との接触などで感染するとされる。国内の感染者は確認されていない。
すでに患者が確認されているスペインやドイツは天然痘ワクチンの購入に動いていると明らかにした。サル痘の予防には天然痘のワクチンが有効とされ、欧州疾病予防管理センター(ECDC)などによると、約85%の発症予防効果があるという。また、ウイルスにさらされてから4日以内にワクチンを接種すると感染を予防する効果が、4~14日以内の接種で重症化を予防する効果があるという。
国内では1976年以降、天然痘ワクチンの接種は行われていない。ただ、2001年の米同時多発テロ事件を受け、国は当初、約250万人分の天然痘ワクチンの備蓄を開始。後藤茂之厚生労働相は27日の記者会見で「テロ対策の観点から国内で生産、備蓄している」としつつ、確保量については「危機管理上の理由から公表を差し控えている」と語り、活用についても言及しなかった。
仮にワクチン接種に踏み切った場合、どのような人が対象となり得るのか。サル痘は、呼吸器感染症である新型コロナウイルスやインフルエンザのように一気に広がる感染症とは異なるため、対象者は限られそうだ。感染者の濃厚接触者に事後的に接種することや、感染者を治療する医療従事者にあらかじめ接種することも考えられる。英国では、医療従事者や濃厚接触者への接種を推奨し、接種体制を整えている。
現在、国内の天然痘ワクチンをサル痘予防に使うことについては薬事承認されていない。厚労省幹部は「初期対応としてどれぐらいの量を持っていればいいのかは判断が難しい。天然痘として準備しているものを活用することは選択肢の一つだと思う」と語った。
一方で、治療薬は、サル痘に有効な抗ウイルス薬の使用が欧州など一部の国で認められている。国内では承認されておらず、発症した場合は対症療法となる。厚労省の担当者は「海外から治療薬を入手する必要があるかどうかも含めて検討している」としている。【金秀蓮、小鍜冶孝志】