東京国税局職員、塚本晃平容疑者(24)ら男女7人による新型コロナウイルス対策の持続化給付金詐取事件。7人は暗号資産(仮想通貨)への投資を通じて知り合うなどし、知識に乏しい大学生らを巻き込み、「ねずみ講」のように申請者を勧誘していた。給付金を投資の「原資」として吸い上げるシステムを作り上げたとみられる。不正受給総額は2億円に上るとみられ、警視庁少年事件課は詐欺グループの全容解明を進めている。(橘川玲奈)
塚本容疑者と主犯的な立場だった元大和証券社員で個人投資家の男(27)=詐欺罪で起訴=との接点は、新型コロナ禍前の令和元年にさかのぼるという。塚本容疑者が、国税局の同期だった男(24)=同=を伴い、個人投資家の男が主催する投資セミナーに参加したことだった。セミナーは仮想通貨事業「マイニングエクスプレス」への投資を紹介するもので、塚本容疑者らはのめり込んでいったとみられる。
そうした中、コロナ禍が起きた。政府は2年5月に個人事業主を支援するため、個人で最大100万円の持続化給付金の支給を開始。捜査幹部は「迅速な支給を優先し、厳格な審査が取られず(男らは)これに目を付けた」とみている。
そして大学生らを個人事業主と偽装させ、給付金の申請を繰り返した。グループのメンバーの大学生の男(21)=同=が、書類送検された当時17歳の高校生だった男(19)に声をかけるなど、同級生や後輩らを勧誘する役割を担っていた。
申請者を紹介していくと、利益が得られるねずみ講的なシステムも構築していたという。
「絶対にもうかる」「失敗しても損しない」。勧誘では甘い文句を並べた。そして「暗号資産に投資をしていれば、個人事業主になり申請資格がある」と合法的な申請も装った。捜査幹部は「冷静に考えれば、違法な申請だと分かるが、社会的な知識が乏しい若者らが中心的に狙われた恐れもある」とみる。
若者らは投資家らによる無料通信アプリ「LINE(ライン)」のグループ《持続化給付金指南役チーム》に入り、ラインで申請方法の指示を受けていた。塚本容疑者は自らの経験を駆使、申請に必要な確定申告書を偽造していた。
こうして200人もの若者らが不正申請の名義人となり、給付金が入金されると、個人投資家の男らに現金を渡していた。男らは投資にあてるなどしていたとみられるが、名義人となった中には、1円も戻らなかった若者もいるという。
少年事件課は海外に出国した30代の男が詐欺グループの中心メンバーとみて調べを進めている。