日本大学の次期理事長に内定した作家の林真理子さん(68)はかつて、週刊誌のコラムで、卒業生として母校の立て直しに意欲を示していた。相次ぐ不祥事で地に落ちた「日大ブランド」の再生を先導できるのか。その手腕が注目される。
「日大変えたる」
週刊文春の2018年6月7日号。林さんは連載中のコラムで、こんなタイトルの一文を寄せた。
当時の日大は、18年5月に起きたアメリカンフットボール部選手による危険タックル問題で揺れていた。この問題では、日大関係者が選手に口止め工作をしていたことが発覚。記者会見を一方的に打ち切ったこともあり、強い批判を受けていた。
林さんはコラムで「OG、OBがどれだけ肩身が狭いかわかってるんですか」と、公の場での説明を避けていた当時の田中英寿理事長や、日大の体質への怒りを表明。日大の組織を調べると、160人以上いる理事、評議員のうち、女性は数人しかおらず驚いたとして、「理事会を解体しなければ、根本的解決にはならないはずだ」と指摘した。
さらに、日大理事に立候補したいとして「私をぜひ。もちろん無給でやります」、「ガバナンス全くなしオヤジばかりのオレ様主義の学校を、オバさんの力で何とか変えてみたい」と書いていた。
新たな理事長には、田中・前理事長体制との決別が何よりも求められている。だが、課題は山積している。
日大は、幼稚園から大学まで12万人近い学生・生徒を抱え、大学の学部や付属校などは全国数十か所に点在している。ある日大教員は「キャンパスや学校ごとに利害や関心が大きく異なり、教職員の中に日大全体のことを考える意識は希薄だった。その結果、前理事長の強権的な運営を許してしまった」と語る。
林さんは日大のような巨大組織を率いた経験はなく、手腕は未知数だ。「学内事情に通じた大物OBや幹部の意向に左右されかねない」と不安視する関係者もいる。別の関係者は「実務に詳しい複数の補佐役が必要だ」と指摘する。
また、日大では1日、教職員らの代表による次期学長選も行われ、酒井健夫・元総長に内定した。3日の学長候補者選出会議で承認される見通しだ。