女性が病院にのみ身元を明かして出産できる独自の「内密出産」を導入している熊本市の慈恵病院は5日、病院にも身元を明かさない「匿名出産」も受け入れる方針を明らかにした。同病院はこれらの出産を受け入れる際の指針(ガイドライン)をまとめ、熊本市に6日、私案として提出する。
同病院は2007年から育てられない子どもを匿名で託せる「こうのとりのゆりかご」(赤ちゃんポスト)を運営。19年に内密出産の仕組みを導入し、昨年12月以降、2人が利用した。熊本地方法務局の見解に基づき、1例目の子の戸籍を市が職権で作成した。国は内密出産について「現行法で対応可能」として、法務、厚生労働両省で運用指針の策定を進めている。
私案では、「妊婦が身元情報を相談員にだけ開示し、提示された内容を一定年齢に達した子に母親同意の下で開示できる」方法を内密出産、「妊婦が身元情報を明かすことなく医療機関で出産し、その後も匿名を維持し続けるもの」を匿名出産と定義。病院は匿名出産の希望者に子どもの「出自を知る権利」を説明して情報提供を促し、拒否されれば受け入れるとした。
慈恵病院は「女性には説明を尽くすが、母子の命を守るためには受け入れざるを得ない」としている。
また、私案には、▽匿名を求める妊婦に対し、匿名で保護、相談、妊娠管理を受けられると説明する▽(親や家庭状況を調べる)児童相談所の調査への対応は母親の同意を得た範囲で行う――などと病院側の対応も明記。子の戸籍については、1例目で出生届の提出がなくても区長の職権で作成したことから、その手順を踏襲した。
同病院の蓮田健理事長は取材に対し、児相の調査が円滑に行えないことなどが法的な課題となりうると指摘し、「私案が国の運用指針のたたき台となればいい」と語った。