全国の小中学生に配られた学習用端末を使ったいじめが相次いでいる。端末のチャットやカメラ機能などを使い、教員の目の届かない水面下でのいじめが目立つ。専門家は情報モラル教育の必要性を指摘している。
「ばか」「死ね」――。授業を受けている最中、児童の手元にある学習用端末にいきなり悪口が送られてきた。中国地方の公立小学校では、1人の児童が端末内にある学習用ソフトの通信機能を使い、別の児童に悪意あるメッセージを送りつけていた。
読売新聞の調査で端末によるいじめが確認された25自治体では、メッセージやチャット機能で他の児童生徒の悪口をやりとりしたり、中傷したりする内容が多く見られた。
関西の公立中学校では、複数の生徒が、閲覧者を限定できる端末の機能を使い、別の生徒の悪口をやりとりしていた。教育委員会の担当者は「教室内で紙の切れ端などを回すような行為だが、端末でより目につきにくくなった」と嘆く。
カメラ機能を使う例も。撮った児童の顔の画像にいたずら書きをしたり、体育の授業で嫌がる女子児童の姿を撮ったりするなどのいじめがあった。
他の児童生徒のIDやパスワードを入手し、端末に勝手に入る「なりすまし」も横行している。
関西の公立中学校では、生徒が他人の端末を勝手に操作してログインし、アダルトサイトへ入っていた。
トラブルのあった自治体にパスワードの入手方法などを聞くと〈1〉他人のID・パスワードを盗み見る〈2〉出席番号などから類推する〈3〉本人に教えてもらって悪用する――などがあった。
情報セキュリティー会社トレンドマイクロ(東京)の調査では、学習用端末を配布された小中学生のうち、約2割がアカウント(IDとパスワード)乗っ取りや不正アクセスなどのトラブルに遭っていた。
文部科学省によると、パソコンなどを使ったネットいじめは、2020年度に1万8870件で過去最多。同省は今年3月、教委や学校向けに学習用端末の使い方についての方針を通知した。その中では「第三者にIDやパスワードを教えない」「他人を傷つけ、嫌な思いをさせることをネットに書き込まない」ことを求めた。
端末を使ったいじめなどへの対策を取る自治体もある。
大阪市教委は昨年10月、市立小中学校の学習用端末に児童生徒が、いじめなどの相談ができる機能を導入した。「いじめ」「勉強」「生活」など相談の種類を選び、相談したい教員に通知できる。東京都豊島区では今年4月、全区立小中学生と保護者に向け、端末で悪口を言って他人を傷つけるなど不適切な使い方をしないよう文書で呼びかけた。
中国地方のある自治体では児童生徒の端末の履歴を集める。学習用アプリの意見を交換する機能を使った悪口のやりとりなどトラブルの確認にも使うという。
児童生徒のネット利用に詳しい千葉大の藤川大祐教授(教育方法学)は、端末の普及でスマホを持たない子供にもネットいじめが広がったとみており、「使用を制限しても子供は抜け穴を探す。端末の使い始めや長期休みの前などの情報モラル教育に力を入れるのが有効だ」としている。