建設現場で適切なアスベスト(石綿)対策が取られないまま作業に従事し石綿を吸い込み、肺がんや中皮腫などになったとして、元労働者や遺族ら190人が7日、20社超の建材メーカーに損害賠償を求めて札幌、仙台、さいたま、東京、横浜、京都、大阪、岡山、高松、福岡の全国10地裁に一斉に提訴した。
建設アスベスト訴訟をめぐっては最高裁が昨年5月、国とメーカーの賠償責任を認める初の統一判断を示した。国は最大1300万円を支払う和解手続きを進めており、未提訴の被害者を救済する給付金制度も創設。ただメーカーについては賠償範囲などについて個別の審理が必要とされ、各地で訴訟が続いている。
弁護団によると、これまでに提訴した1000人超の原告のうち約9割が国から賠償を受けたが、建材メーカーとの間で判決や和解により解決したのは1割ほどにとどまるという。
今回の一斉提訴では、メーカーが安全性確保義務や警告義務に違反したとして元労働者1人につき最大で2600万円の慰謝料を請求。訴訟を通じ、メーカーに謝罪や早期解決のための和解、国の給付金制度への資金拠出も働きかける。
「建材メーカーは裁判を引き延ばし、和解を拒み続けている」。建設アスベストにより健康被害を受けた元労働者らのメーカーに対する全国一斉提訴が行われた7日、東京訴訟の弁護団は、提訴を受けて開いた記者会見で、こう批判した。
弁護団によると、今回訴えを起こしたメーカーの中には、同種訴訟を巡り最高裁で賠償責任が確定した11社も含まれているが、いずれも継続中の訴訟では、和解や被害者救済のための国の給付金基金への拠出を拒否しているという。
建設アスベスト訴訟は最初の提訴から14年が経過したが、一部のメーカーは現在も、被害者の医療記録の取り寄せを裁判所に申し立てるなど、「審理の引き延ばしともとれる訴訟活動を続けている」(弁護団)。
メーカーによる被害者救済が進まない理由について、東京訴訟弁護団の水口洋介弁護士は「経営上の負担に加え、早期に和解すれば被害者の請求がさらに増えるという懸念があるのでは」と指摘する。
ただ、今回の東京訴訟の原告68人のうち、存命中の元労働者21人の平均年齢は76・1歳と高齢化。水口弁護士は、メーカー側が自主的に早期解決する必要性を強調する。
アスベストを吸い込み肺がんで令和元年12月に夫=当時(69)=を亡くした原告の一人、金高悦子さん(72)は「夫は抗がん剤治療で足が丸太のようにパンパンになり、(病院から)自宅に生きて帰ることができなかった。メーカーには被害者の救済をお願いしたい」と訴えた。