改めて危険運転致死傷罪の成立が認められた――。5年前、神奈川県大井町の東名高速道路で「あおり運転」を繰り返し、一家4人を死傷させたとして自動車運転死傷行為処罰法違反(危険運転致死傷)などに問われた福岡県中間市、無職石橋和歩被告(30)に対し、横浜地裁は6日の差し戻し審の裁判員裁判で、求刑通り懲役18年の判決を言い渡した。弁護側は控訴する方針。
石橋被告はこの日、黒っぽい上下のスーツに青のネクタイ、短髪に眼鏡姿で出廷。真っすぐ前を向いて主文を聞き終えると、時折体を動かしながら、判決理由に耳を傾けた。
青沼潔裁判長は判決で、石橋被告に妨害する目的があり、「あおり運転」と4人が死傷した事故に因果関係を認めたうえで、「自らが犯した罪に、
真摯
(しんし)に向き合っているとは言えない」と指摘した。
娘2人が、両親の萩山嘉久さん(当時45歳)と友香さん(当時39歳)を一度に失ったことにも触れ、「悲しみは計り知れない。妨害運転による危険運転致死傷の事案の中でも重い部類」と述べた。
2018年の1審では、弁護側も妨害運転を認め、危険運転致死傷罪の適用の可否が争点だった。地裁は同罪の成立を認定して懲役18年(求刑・懲役23年)を言い渡していた。だが、差し戻し審では一転、石橋被告は「危険な運転はしていない」と無罪を主張した。
判決を受けた後の石橋被告の様子について、弁護側は「『一方的で、証拠や自分の述べたことを理解されていない』と受け止めている」と明かした。控訴することも求めたという。
裁判員「全く反省ないと感じた」
判決後、裁判員を務めた男女3人が記者会見に応じた。
判決を聞く石橋被告の様子について、川崎市宮前区の40歳代の自営業男性は、「全く反省していないと感じた。『自分のせいではない』と思っているように見えた」と語った。
川崎市の20歳代女子学生は「ドライブレコーダーや防犯カメラなど客観的な証拠がないなか、分からない部分を自分たちなりに考えるのは難しかった」と振り返った。
横浜市の50歳代男性は、「あおり運転をなくす一助になればと願って裁判に参加したが、公判の期間中も多発していて残念だった」と話した。
傍聴21席に185人
地裁前では雨の中、21席の一般傍聴席を求めて185人が列を作った。判決を見守った横浜市戸塚区の男性(68)は「あおり運転」をされたことがあるといい、「運転手は改めて危険性を自覚すべきだ」と語った。中央大法学部4年の女子学生(22)は「高速道路で急に減速したり、胸ぐらをつかんだりする行為は悪質。厳罰化や新たなルールで、悪質な行為が少なくなってほしい」と願った。