井上邦雄組長・織田絆誠代表を相次いで襲撃 六代目山口組が待ち望む反撃、そして抗争激化へ

6月6日午後9時50分ごろ、神戸市内にある指定暴力団・絆會の織田絆誠代表の自宅に軽乗用車が後ろから突っ込んだ。絆會は六代目山口組から分裂した神戸山口組から再分裂した組織で、当初「任侠山口組」と称していたが、現在は「山口組」の看板を下ろし、分裂抗争からも距離を置いていた。なぜ事件は起きたのか、全国紙社会部記者が語る。
「ここにきて六代目山口組が敵対勢力、しかも組長・幹部クラスへの襲撃事件を多発させています。5月8日、神戸山口組ナンバー2の入江禎・宅見組組長の自宅に車両特攻が行なわれ、事件前日の6月5日には、神戸山口組トップの井上邦雄組長宅への発砲事件が発生したばかりでした。井上組長宅には10発以上の銃弾が発射されたとみられています。今回の織田代表宅への車両特攻も30代の男が出頭していて、六代目山口組関係者と見て取り調べを進めています」
2017年9月、神戸側は織田代表の乗った車を襲撃し、白昼堂々ボディガードを射殺している。一方で、六代目側は絆會側と組員同士の抗争こそあれど、織田代表を狙った抗争事件は今回が初めてだった。暴力団に詳しいフリーライターの鈴木智彦氏が六代目側の行動を分析する。
「暴力団組員は上層部の意思を忖度して動きます。裁判で教唆にならないよう明確な指示はしませんが、抗争になれば上が黙認しない暴力事件などあり得ません。六代目山口組の中に、絆會に制裁を加えよという空気があるから事件が起きた。それは間違いない。軽自動車をバックで突っ込ませた程度では、門扉が破損する程度の損害しかなく、実質的な制裁としての効果はほぼゼロです。
しかし、絆會が敵であり、神戸山口組と同様の裏切り者で、『山口組』の看板を下ろしても許すつもりはないという意思表示にはなる。彼らはこうしてマスコミが大々的に報道するのも計算し、事件を起こしています。六代目山口組は今年3月から神戸山口組から離脱した池田組への襲撃を再開していた。6月1日に六代目山口組側から『池田組には手を出すな』という緊急通達が出て、一時休戦になっています。六代目山口組は池田組を解散に追い込んで、抗争終結に繋げたいのでしょう。絆會はその池田組と共同戦線を張っている。絆會トップが攻撃されたのだから、池田組への圧力は続いているとみていい」
今年の8月で分裂抗争から丸7年が経つ。警察庁の調査によると、2021年末での構成員と準構成員の合計は六代目山口組が8500人、神戸山口組は1000人、絆會は230人。人数の差は大きいものの、いずれの組も資金力はあると見られている。依然、今回の六代目山口組の襲撃に対して、報復を起こす能力はあるだろう。
「六代目山口組が挑発のような小競り合いを繰り返すのは、相手のメンツを潰すことで反撃を誘っているのかもしれません。六代目山口組としては、あえて反撃を受けることで、さらなる襲撃事件を起こしやすくなる。実行犯が逮捕されても、個人的な怨恨だったと主張できるからです。暴力団が恐れているのは警察の捜査が上層部に及ぶこと。六代目山口組もトップの司忍組長や高山清司若頭が逮捕されるような事態は絶対に回避したい。そのためには山口組のために動いたのではなく、個人的な恨みを晴らしたのだという建前が必要になる。今回の一連の襲撃事件で六代目山口組に抗争を継続する強い意思があるのがはっきりした以上、今後、銃撃事件が頻発する危険は高いと見ています」(前出・鈴木氏)