「票ハラ」防止へ、福岡県議会が条例可決 都道府県議会で初

福岡県議会は21日、地方議員らへのハラスメント行為根絶を目指す条例案を賛成多数で可決した。対象には議員の家族や秘書、県議選立候補予定者らも含まれており、ハラスメントを防ぐことで、政治参画を進める狙いがある。こうした条例の制定は都道府県議会で初めて。
条例によると、議会内外でのセクハラやパワハラ、投票の見返りにさまざまな要求をする「票ハラ」などがあった場合、委嘱された弁護士などの専門家が相談を受け事案を調査。必要な場合は議長が防止措置を講じる。やむを得ない場合は個人情報を伏せ、相談内容や調査結果を公表することができると規定した。
相談は議長が窓口で、申し立てた人など関係者には守秘義務を課す。「市町村議会との連携」も掲げ、県内市町村議会議員らも相談の対象とした。
条例は来年1月に施行し、同4月から相談を受け付ける。議員提案された条例の検討会議座長を務めた吉村悠(はるか)議員は「ハラスメント根絶は地方議会にとって喫緊の課題だ。来年の統一地方選に向け、公職を目指せる環境を早期に整備する必要がある」と訴えた。
地方自治研究機構(東京)によると、議員や職員のハラスメント防止に関する条例は5月末現在、東京都世田谷区や大阪府池田市、福岡県中間市など9都道府県14市区町で定められている。【光田宗義、野間口陽】
地方議員4割、ハラスメント「受けた」
内閣府が2020~21年に地方議員1万100人を対象に実施した調査では、回答した5513人のうち42・3%に当たる2334人(男性1053人、女性1247人、性別無回答34人)が、議員活動や選挙活動中に支持者や有権者、議員から「何らかのハラスメントを受けた」とした。「SNS(ネット交流サービス)、メール等による中傷、嫌がらせ」「性的もしくは暴力的な言葉による嫌がらせ」の他、「投票、支持の見返りに何らかの行為を要求」も内容に挙がった。
福岡市の男性市議は「100票持っている」という有権者から、望む政策を要求された。また福岡県内の女性市議は、投票の見返りとして特定の人にあいさつに行くよう求められた。この女性市議は「そういう人は往々にして投票してくれない」と対応しなかったが「実態を知れば、有権者のハラスメントも減るかもしれない。そういう意味で条例の意義はある」と話した。
福岡市の女性市議は、SNSに性的なメッセージを送られたり、市政報告会で至近距離から何枚も写真を撮られたりした。気にしないよう心がけたが不快だった。条例については「ハラスメントばかりが伝えられて、議員になりたい人が一歩引いてしまわないか心配だ」と話した。【野間口陽】