東京都文京区の東京大前で今年1月、大学入学共通テストの受験生ら3人が刺された事件で、名古屋家裁は22日、殺人未遂や威力業務妨害などの疑いで家裁送致された当時17歳の男性(18)=名古屋市=の少年審判を開き、検察官送致(逆送)を決定した。「犯情の重さに照らし、保護処分を選択する社会的許容性を見いだしがたい」として刑事処分が相当と判断した。
後藤隆裁判長は決定理由で「最も偏差値の高い東京大の理科3類を志望していたが、高校2年で成績が低迷。2021年秋に担任や父から進路変更を勧められ、存在意義がなくなったと考えた」と指摘。家出し、夜行バスで東京に到着した日が共通テストの日であると気付き、通行人を殺傷するなど重罪を犯せば「罪悪感を抱えて自殺できると考えた」としている。
凶器や薬品を用意し、犯行現場を下見するなど計画的な犯行であり「人命を顧みない態度は顕著で動機も身勝手」と断じた。
男性の特性について「他者と差を付けなければならないという価値観に強くとらわれていた」と指摘。他の兄弟と比較され、両親の目が向けられにくかったため「自己主張を控える姿勢を身につけ、勉強に没頭して交友から距離を置き、情緒面の発達が未熟なままであった」と推察した。
こうした経緯を踏まえて「問題性は根深く、改善には相当長期間を要する」として、保護処分は妥当ではないと結論づけた。
事件は1月15日に発生。男性は受験に訪れた千葉県の高校3年だった男女と、通りかかった70代男性を刃物で刺したなどとして、現行犯逮捕された。東京地検が2月から約3カ月間、鑑定留置をした後、5月27日に東京家裁に送致。同日付で名古屋家裁への移送が決まった。【藤顕一郎】