2015年10月に兵庫県警機動隊の巡査だった木戸大地さん(当時24歳)が自殺したのは先輩らのパワーハラスメントが原因だったとして、両親が兵庫県を相手取り約8000万円の損害賠償を求めた訴訟の判決で、神戸地裁は22日、県に100万円の賠償を命じた。久保井恵子裁判長は先輩の行為をパワハラと認定したが、自殺との因果関係は否定した。
判決によると、木戸さんは12年に機動隊に入り、航空レンジャーや車両の運転員などとして勤務した。15年10月、遺書に「あなた(先輩)の思い描いた通りになってよかったですね」などと記し、寮の自室で自殺した。
判決は、14~15年、書類の記載ミスをした木戸さんに、1人の先輩が「ボケ木戸」と記載した付箋を書類に貼り、月2~3回の頻度で「運転辞めてまえ」と怒鳴ったほか、公休日に呼び出して緊急性のない書類が未提出だったことを叱責したことを認定。他の隊員への指導に比べて厳しい言動で、「暴言や嫌がらせと評価される不適切なもので、精神的苦痛を与える違法なパワハラだった」と判断した。
一方で、木戸さんが亡くなる約3カ月前にうつ病を発症したことについては、仕事で他の悩みも抱えていたと指摘。パワハラ行為は「一定の精神的負荷を与えるものだったが、強い精神的負荷を与えるものとまでは評価できない」とし、自殺との因果関係も否定した。
原告側は自殺との因果関係が否定された点を不服として控訴する方針。判決後に記者会見した父一仁さん(73)は「納得しがたい内容で、胸が張り裂ける思い。『大地、ごめんな。もう少し頑張ってみるわ』と仏壇に報告したい」と話した。
県警は「判決内容を検討し、関係機関と協議の上、今後の対応を決めたい」とコメントした。【巽賢司】
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