山口県阿武町で起きた誤送金4630万円どころの金額ではない。
三重県南伊勢町立「南伊勢病院」に勤務する38歳の町職員が地下アイドルの追っかけのため、1億5000万円以上の公金を着服。回収は不透明で、約6割が伊勢志摩国立公園内にある人口1万1439人の過疎の町が窮地に立たされている。
職員は南伊勢町の上下水道課の会計担当だった2017年以降と、病院の経理担当だった19年以降の計6年、請求書の改ざんや銀行口座から出金を繰り返し、1億5000万円以上を着服していた。手口はこうだ。
「上下水道課では偽の支出決議書を作成して公金を着服。病院の経理担当の時は、患者が支払った診療費を金融機関に入金する仕事を任され、その一部を抜き取ったり、病院の口座から勝手に現金を引き出していた。1人で会計を担当し、犯行が発覚しないように決算書のデータなどの改ざんを行っていた」(同町総務課担当者)
今年5月、病院が昨年度の決算書類を確認したところ、帳簿の数字が合わず、町の総務課に調整を依頼。今月7日、総務課が使途不明金を発見し、当該職員が同日、役場を訪れ、「私がやりました。これ以上、言い逃れできない」と申し出た。
「1億5000万円以上」とは、あくまで本人の申告による病院からの着服金額。上下水道課の時の横領金は含まれていない。不正期間も本人が申し出たもので、町は職員が上下水道課に配属された08年当時から着服がなかったかを調べている。実際の被害総額は調査中というが、少なくとも1億5000万円では済まない。
金の使い道について、本人は「アイドルのコンサートやグッズ購入などに使った」と話し、ネットゲームの課金やクレジットカードの返済にも充てていた。
■全国で人口減少率が最も高い
「いわゆる地下アイドルの追っかけをしていて東京や名古屋まで遠征し、その交通費や宿泊費、コンサート代のほか、プレゼントまで買っていたそうです。本人は『弁済の意思』を示していますが、その能力があるかは分かりません。これまで返ってきたのは100万円余りです。ただ、車など高価な品を購入したわけではないのに、追っかけだけでこれほど巨額になるのか。後は捜査機関に任せるつもりです」(前出の担当者)
南伊勢病院は3年前から病床数の削減などで経営改善を図っていた。南伊勢町は人口の減少率が全国ワースト。30年後には4000人を下回る予測もある。
「消滅危機」が叫ばれる中、「地下アイドルおたく」によって、町の財政まで危機にさらされている。