市街地で目撃増えるクマ、山間部よりも高密度…専門家「実を付ける街路樹は避けて」

石川県内でクマの目撃情報が相次いでいる。県によると、5月まで昨年を上回るペースで推移し、今月9日までに96件が寄せられた。目立つのは小学校近くや住宅地の路上など市街地に出没するケースだ。石川県立大の調査では、市街地周辺の山林に山間部よりも高い密度でクマが生息しているとみられるといい、専門家は「市街地周辺でクマの定着が進んでいる」と指摘する。
今月、クマの目撃が相次いだ同県津幡町の町立太白台小周辺。町によると、4日午前、同小体育館裏の桜の木に登り、その後逃げていく姿が目撃された。9日には隣接する太白台保育園近くで木に登るクマを猟友会のメンバーらが追い払った。
猟友会や石川県警津幡署が通学路などで警戒し、同小では教職員が見守る中、児童らが一斉下校するなどの対応を取った。13日、同小付近のワナに体長1メートル15の成獣がかかったが、同小や保育園では引き続き警戒を続ける。
金沢市では今月1日、旭町の路上にいるクマを通行人が目撃。近くのアパートでは、クマが割ったとみられる玄関ガラスが確認された。
石川県内では今月9日までに、津幡町で40件、金沢市で15件、加賀市で9件、小松市と宝達志水町でそれぞれ7件ずつ目撃情報が寄せられている。

県立大の大井徹教授(動物生態学)はより正確なクマの分布を確認するため、2021年6~12月、金沢市の委託を受け、市内の市街地周辺の山林と奥の山間部にカメラを計35台設置した。撮影されたクマの個体を胸の斑紋で識別しながら生息密度を推計した。
その結果、クマの生息密度は7~8月の市街地周辺の山林では少なくとも0・37頭だったのに対し、奥の山間部では0・036頭だった。夏に市街地で目撃件数が増える傾向は10年頃から続いているという。
20年9月には、2頭の子グマを連れた雌が市街地付近の山林で確認され、翌年夏頃には行動を別にするようになったという。市街地周辺で個体が定着し、繁殖しているとみられるという。
市街地近くでの定着が進んでいる理由について、大井教授は「田畑が放置され、そこに森が再生してきたことで、里山がクマの生息環境に近くなったため」と説明する。県内のクマの分布エリアは、17年は1978年の約2倍に拡大しているという。「街路樹を植え替える際、実をつける品種を避けるなど、長期的に対策に取り組んでいく必要がある」と述べた。