「10億円」コロナ給付金詐取事件 1日最大60件以上を虚偽申請か

インドネシアから22日に移送されて詐欺容疑で逮捕された谷口光弘容疑者(47)らのグループが、新型コロナウイルス対策の国の「持続化給付金」計約10億円を不正受給したとされる事件で、2020年7月にはこのグループが1日で最大60件以上の虚偽申請をしていたことが捜査関係者への取材で判明した。同給付金の申請受け付けは20年5月に始まったが、グループによる虚偽申請は同6月から7月にかけて急増していたという。警視庁捜査2課は、グループが急拡大した詳しい経緯を調べる。
捜査関係者によると、グループの最初の虚偽申請は、申請受け付けが始まった20年5月1日に光弘容疑者が自身の関連する会社名義で行ったものだった。さらに5月中旬には、知人の太田浩一朗容疑者(34)=今月22日に詐欺容疑で逮捕=がグループに加わり、他の中心メンバーを誘ったり、名義人の勧誘役を増やしたりするなど、グループ拡大の重要な役割を担ったとされる。
光弘容疑者は、太田容疑者が当時店長を務めていた東京・六本木の飲食店の常連客だった。この店で、不正申請の名義人を増やすためのセミナーなども開いていたという。光弘容疑者はセミナーで「税理士」を自称していたとされるが、資格は持っていなかった。
虚偽申請は6月から増加し、7月には1日で最大60件以上に上ったが、収入欄については「前年度(19年度)120万円程度」「20年4月ゼロ」と書き込むケースが多かった。収入欄が同じ金額だったことなどから、中小企業庁の審査で却下されることもあった。結局、20年5~9月に虚偽申請したとされる約1780件のうち、受給できたのは約半数にとどまった。申請名義は大半が個人で、年代の幅は20~80代だったが、中心メンバーと同じ年代とされる30~40代が多かったという。
光弘容疑者は20年10月にインドネシアに出国したが、日本の外務省から旅券返納命令が出ており、不法滞在の疑いで現地の入管当局に逮捕されたことが今月8日に明らかになった。
事件では5月30日と今月19日、光弘容疑者の元妻で会社役員の谷口梨恵容疑者(45)、長男で配管工の大祈(だいき)容疑者(22)、事件時に少年で個人事業主の次男(21)の3人も詐欺容疑で逮捕され、梨恵容疑者は今月17日に詐欺罪で起訴されている。【安達恒太郎、林田奈々】