新型コロナウイルス対策の持続化給付金詐欺では過去最大の10億円近くがだまし取られたとされる事件で、谷口光弘容疑者(47)が22日にインドネシアから移送され、警視庁に詐欺容疑で逮捕された。飲食業など複数の会社を経営していた谷口容疑者は、数年前にインドネシアの油田開発で損失を抱えたといい、事業資金に窮して不正受給を始めた可能性が浮上している。
「もうけ話が好きで、よく『一獲千金』という言葉を口にしていた」。谷口容疑者について、地元・三重県松阪市に住む40歳代の知人男性はそう語る。
知人らによると、谷口容疑者は地元の高校を出た後、バーテンダーのアルバイトを経て20歳代前半で独立し、地元でバーを開いた。その後、洋風居酒屋など複数の店を手がけ、情報誌の発行なども行っていた。
新しい制度や最新の話題に敏感で、「知っているのと知らないのでは大きく違う。知識は武器だ」と話した。新規事業に乗り出す際は「一獲千金だ」と語っていたという。
2011年の東日本大震災後、再生可能エネルギーとして注目が高まった太陽光発電の関連事業に進出。三重県の山間部などに発電設備を設置するとして国に申請を行い、必要な認定を得た上で、事業ごと売却して利益を得たという。
利回り200%
14年には東京に拠点を移し、港区六本木に会社を設立した。韓国クラブの共同経営に乗り出すなどし、事業拡大を目指した。
だが、まもなくインドネシアの油田開発事業に手を出した。知人らに採掘現場の動画や事業計画書を見せ、「利回りは200%」などと言って出資を募ったが、事業が頓挫。知人らから金の返済を迫られるようになったとみられる。
コロナ禍に入り、20年5月に持続化給付金制度が始まると、当時妻だった梨恵被告(45)(詐欺罪で起訴)や長男の大祈容疑者(22)(詐欺容疑で逮捕)らと不正受給を開始。約50人の仲間とともに900人以上の申請名義人を集め、約5か月間で10億円近くを不正受給したとされる。
同7月以降、中小企業庁の審査で不正が見抜かれることが増え、申請名義人から「話が違う」などとクレームが相次いだ。同10月、「インドネシアで金を作って給付金を返す」と言って出国し、同12月に詐欺容疑で指名手配された。
逃亡を否定
現地の入管当局や住民らによると、インドネシアでは首都ジャカルタのタワーマンションなどで生活。最近はスマトラ島南部でナマズを養殖する事業に投資していたが、日本で梨恵被告らが逮捕された後の今月7日夜(現地時間)、不法滞在容疑で拘束された。
日本に移送される3日前の19日には、日本の知人男性に連絡を入れていた。男性によると、スマートフォンの通話アプリの画面に「
Na
(ナ)
ma
(マ)
zu
(ズ)」と見知らぬアカウント名が表示され、電話に出てみると、谷口容疑者だった。
谷口容疑者は日本での報道を見ていたようで、「給付金を返す金を作るため出国したのに、『逃亡した』と報じられるのは気に入らない」と不満を漏らし、「不法滞在で捕まるとは思わなかった。返金できるあてがあるのに悔しい」と話したという。