西インド洋の島国モーリシャスの沖合で2020年7月、商船三井(東京)が運航する大型貨物船「わかしお」が座礁して約1000トンの重油が流出した事故で、国の運輸安全委員会は30日、事故原因などについての経過報告書を公表した。わかしおの乗組員らが現場周辺の詳細な海図を入手しておらず詳細な情報がないのに、スマートフォンを使うために電波を受信できるよう島に接近したため、浅瀬に乗り上げたと考えられると指摘した。
この事故を踏まえ、運輸安全委は30日、船の運航会社や所有会社に対し、安全対策の指導を徹底するよう求める意見を斉藤鉄夫国土交通相に書面で提出した。
報告書によると、わかしおは20年7月14日にシンガポールを出港。ブラジルに向かって航行中、通過予定だったモーリシャス島に接近し、同25日に島南東部の浅瀬に乗り上げた。船長ら乗組員20人に死傷者はいなかったが、周辺海域に約1000トンの油が流出し、海洋汚染の原因となった。
乗組員らへの聞き取りなどをもとにした経過報告書などによると、わかしおはスマホの電波を受信する目的で針路計画を変更し、入港予定がなかったのに島へ接近していた。島付近の詳細な海図を入手しておらず、サンゴ礁や障害物などの情報が十分ではない状態で座礁したとされる。また、定額料金でデータ通信の可能な機器を搭載しておらず、事故以前にも同様の理由で針路を変更して陸地に接近していたことも判明したという。
運輸安全委は報告書で沿岸海域を航行する場合の海図の必要性を指摘したほか、「私的な事由で陸岸に接近するなどの不安全行動を取らないことが必要であると考えられる」とした。
事故時、運航会社の商船三井と、実質的な所有会社である長鋪(ながしき)汽船(岡山)には、わかしおが予定針路を外れて陸地に接近した場合に直ちに認識して注意喚起できる体制や、両者で情報共有する仕組みもなかったと考えられるという。
事故前には船内で乗組員の誕生日パーティーも開かれていたといい、現地の裁判所は21年12月、安全な航行を怠った罪に問われたインド人の船長とスリランカ人の1等航海士に禁錮1年8月を言い渡した。【木下翔太郎】