TBS系人気時代劇「水戸黄門」の3代目黄門役で親しまれた、俳優の佐野浅夫(さの・あさお、本名=佐野浅雄)さんが6月28日、老衰のため死去していたことが4日、分かった。96歳だった。人情味あふれる「泣き虫黄門」として、初代の東野英治郎さん、2代目の西村晃さんに続き1993年から2000年まで出演。黄門役に抜てきされるまで脇役人生を歩み続け、00年には21歳年下の育子夫人との再婚でも話題を呼んだ努力家俳優が、帰らぬ人となった。
庶民派の「黄門さま」が、天国へと旅立った。佐野さんが「水戸黄門」の3代目・徳川光圀役の座をつかんだのは、67歳の時。それまで脇役一筋だったが、東野さん、西村さんに続く国民的ヒーロー役に抜てきされた。
「泣き虫黄門」のキャッチフレーズは、自ら名付けた。「情にもろい黄門さまを前面に出したい」と、それまでの黄門様のイメージを一新。石坂浩二にバトンタッチする75歳までの7年間を演じ続け、お茶の間に親しまれた。
真面目で努力家として知られた。NHKテレビ小説「藍より青く」(72~73年)では熊本・天草で漁師生活を体験し、そば店の職人を演じたTBS系「肝っ玉かあさん」(68~72年)では、そば店50店を訪ね歩いた。「NGは恥。そんな役者の生き残りです」と、セリフは常に完全に暗記していた。
ほのぼのとした雰囲気の佐野さんだが、原点は正反対の場所にあった。1943年、日大在学中に劇団「苦楽座」に入団したが、45年3月、山梨の特攻隊員として召集を受けた。爆弾を体にくくりつけ、敵の戦車に体当たりする任務を受け持った。沖縄行きを命じられたが、寸前で内地勤務に変わったため玉砕を免れていた。
舞台「セールスマンの死」「アンネの日記」、映画「きけ、わだつみの声」「太陽の季節」などのほか、テレビドラマでは下町のオヤジ役として人気を得た。NHKラジオ「お話でてこい」での童話の朗読役で、4000回以上の放送を続けた。
私生活では、50年に幼なじみで3歳上の英子さんと結婚し、収入のない無名時代から支えられたが98年に死別。74歳だった2000年2月に、21歳下で元料亭女将の育子さんと再婚。「娘と女房がいっぺんに来た感じ。この女房が目に入らぬか!」と喜びを表し、話題を呼んだ。5代目の黄門役・里見浩太朗とは、親戚関係にあたる。96年、勲四等瑞宝章を受章。