2020年7月の九州豪雨から4日で2年となるのを前に、熊本県南部を流れる球磨川の氾濫で大きな被害が出た同県八代市などで3日、犠牲者を追悼する行事があり、被災地に鎮魂の祈りが広がった。
4人が亡くなり、1人が行方不明となっている同県八代市の追悼式には遺族ら約30人が参列した。遺族代表で妹の塩崎つぼみさん(当時68歳)を亡くした忠夫さん(83)=同県益城町=が「『光陰矢のごとし』。残された家族にとっては、まるで昨日の出来事のように思える」と2年の歳月を振り返った。
「兄貴、助けて」。八代市坂本町の球磨川沿いで1人暮らしをしているつぼみさんから電話があったのは2年前の7月4日午前5時ごろ。約40キロ離れた地で別居する忠夫さんは、現場の状況がのみ込めず「すぐに家を出ろ」と言ったが、「家具に体を挟まれて動けない」という返事が返ってきた。
何度もやり取りを繰り返した1時間余り後「兄貴、さよなら」という言葉が最後になった。その後も忠夫さんは必死に電話をかけ続けたが、応答はなかった。
長男の忠夫さんからみて、末っ子で13歳年下のつぼみさんは我慢強く、独身のまま両親を亡くした後も一人で古里に残り、小さな商店を切り盛りしていた。追悼のことばで、忠夫さんはつぼみさんに「天国のおやじ、おふくろと安らかに過ごしてください」と語りかけた。
「もっとつぼみに楽しい思い出をたくさんつくってやれたら。そう思うと今も残念でならない」。式典後、忠夫さんは静かに語った。【西貴晴】