日本の選択 エネルギー政策も「安全保障」の一環だ わが国も例外ではない対露依存の大きなリスク、政府の節電要請は〝責任放棄〟

日本政府は7月1日から9月末まで、全国の家庭や企業に節電を要請している。報道によると、「冷房などを適切に使用しながら、不要な照明を消すなど、無理のない範囲で節電への協力」が呼びかけられたという。
だが、わざわざ無駄な電力消費を行っている国民や企業など存在するのだろうか。節電には「大きな無理」が伴うのが常識だ。
そもそも、この要請自体が「奇妙な訴え」というべきだろう。
なぜなら、政府の果たすべき役割は、国民に節電を要請することではないからだ。政府は電力を安定的に供給して、国民が熱中症などで倒れることを防ぎ、企業活動に支障が出ないようにしなければならない。自身の重要な責任を放棄し、あろうことか国民に訴えるなど論外だ。「政権の統治能力の低さ」を露呈しているようなものだ。
わが国では、電力が文明社会において死活的に重要であるとの認識が乏しい。東日本大震災以降、原子力発電が敵視され、「カーボンニュートラル(脱炭素)」がもてはやされると、石油や石炭などによる発電が「悪しきもの」であるかのような言説が流布された。
繰り返すが、政府の重要な責任は、安価で安定的な電力を国民や企業に供給することだ。この視点を無視した「再生可能エネルギー推進」など空理空論の域を出ないといっても過言ではない。現実的な電力供給のためにあらゆる方策を尽くすべきだ。
ウラジーミル・プーチン大統領率いるロシアによるウクライナ侵略は、われわれに「エネルギー政策が、安全保障問題に直結している」ことを明らかにした。ロシアの天然ガスに依存していたドイツが大転換を図っているのも、ロシアに依存すること自体が危険という認識からだろう。
わが国も例外ではない。
プーチン氏は6月30日、日本商社が出資している石油・天然ガス開発事業「サハリン2」を、事実上接収するような大統領令に署名した。ウクライナ侵攻を受けた対露制裁への報復行為とみられる。経産省によると、日本の2021年のLNG(液化天然ガス)輸入量の約9%がロシア産というので、日本に影響を与える可能性も否定できない。
ここで誤ってはならないことがある。
それは「対露制裁」に参加した日本政府の判断そのものが間違いだったと主張することである。国際社会に協調した岸田文雄政権の対露政策は、まっとうなものだった。むしろ、真に反省すべきは、ロシアのような国家に、わが国のエネルギー政策が依存してきたことである。北方領土問題をみても明らかなように、ロシアは決して日本に対して友好的な国でない。
いたずらに事を構えるのは慎むべきだが、わが国の根幹であるエネルギー政策での対露依存は、それ自体が大きなリスクのある行為であった。
エネルギー政策も、安全保障政策の一環であるとの認識を広く共有したい。
■岩田温(いわた・あつし) 1983年、静岡県生まれ。早稲田大学政治経済学部政治学科卒業、同大学院修士課程修了。大和大学准教授などを経て、現在、一般社団法人日本歴史探究会代表理事。専攻は政治哲学。著書・共著に『「リベラル」という病』(彩図社)、『偽善者の見破り方 リベラル・メディアの「おかしな議論」を斬る』(イースト・プレス)、『なぜ彼らは北朝鮮の「チュチェ思想」に従うのか』(扶桑社)など。ユーチューブで「岩田温チャンネル」を配信中。