自宅に子どもを放置したとして保護責任者遺棄容疑で親が逮捕される事案が北海道内で2件、相次いだ。容疑者はスマートフォンを活用した「見守りカメラ」を頼りに数時間以上も外出したとされるが、道警は必要な保護を怠っていると判断し、逮捕に踏み切った。親の負担の軽減が期待できる見守りカメラだが、過度な依存は禁物だ。【谷口拓未】
8~13時間にわたり
二つの事件は釧路市と札幌市で発生。道警によると、釧路市で6月10日、同居する生後4カ月の男児らを自宅に放置してパチンコ店などに行ったとして、10代と30代の夫婦が保護責任者遺棄容疑で逮捕された。男児は意識不明の状態で発見され、死亡が確認された。夫婦は6月8日の朝から晩まで約13時間半にわたり、男児を置き去りにしたとされる。
また、札幌市で7月4日、生後7カ月の男児を約8時間にわたり、自宅に放置して飲食店に出かけたなどとして札幌市白石区に住む20代と40代の内縁の夫婦が保護責任者遺棄容疑で逮捕された。「家の鍵をなくした」という通報を受けた警察官らが駆けつけたところ、男児は布団でうつぶせになって泣いていたという。エアコンは稼働されていなかった。
「最悪の事態、避けねば」
生後数カ月の場合、1日に母乳やミルク、離乳食の摂取が数回、必要とされ、就寝中の体調不良や不慮の事故の恐れもある。8時間~約半日という放置の時間について、捜査関係者は「自給できない月齢で1分たりともと言わないが目を離してはならない」と説明。「逮捕はやり過ぎなのか。我々は『先の絵』を見ている。最悪の事態を避けなければならない。親の責任は免れない」と語る。
二つの事件の共通点は、居室内のカメラの存在だ。捜査関係者によると、釧路事件は、スマートフォンを通じて子どもの様子を見られる固定式の見守りカメラが設置されていた。札幌事件はカメラ付きのスマホを自宅に設置しつつ、別のスマホを容疑者が所持。計2台を使うという見守りカメラと同様のスマホのアプリを活用していたという。
「すぐ駆けつけられない」
市販の見守りカメラは動作や音の検知、温度センサーの機能などがあり、スマホなどの受信機で子どもの様子や環境の変化を認知できる。メーカーは、寝室で子どもを寝かしつけ、別室で家事をしながらも目配りできる、という活用法を紹介する。
ただし、乳児ら幼い子どもに対しては同じ建物内での利用を想定。不測の事態に対応できないからだ。北海道子ども子育て支援課の担当者は「カメラがあっても、遠く離れたところから見守るのは危険だ。すぐに駆けつけられない」と利用の方法に注意を呼び掛ける。札幌事件で逮捕された女性は「以前から同様のことを繰り返していた」と供述したという。
「パチンコや飲酒に緊急性はない。乳児は声を上げられない。見守りカメラは子育ての助けになるが、使い方を誤ってはいけない」と捜査関係者。大阪府で6月末、自宅に放置された2歳児が熱中症で死亡する事件もあった。道の担当者は「これからさらに暑くなる。熱中症の危険性も高まるので、保護者は子どもの様子に細心の注意を」と話した。