福岡の商業施設で女性刺殺 少年、起訴内容認める 地裁初公判

福岡市の大型商業施設で2020年8月、買い物客の女性(当時21歳)が刺殺された事件で、殺人罪などに問われた住居不定の少年(17)は6日、福岡地裁(武林仁美裁判長)で開かれた裁判員裁判の初公判で「間違いありません」と起訴内容を認めた。公判では少年を刑事罰とするか、家裁送致の上で第3種(医療)少年院送致などの保護処分とするかが焦点となる見通しだ。
少年は事件当時15歳。家裁送致の後、「刑事処分相当」と判断され検察官送致(逆送)となり、起訴された。最高裁などによると、刑事処分の対象年齢が16歳以上から14歳以上に引き下げられた01年以降、事件当時14、15歳による殺人事件が公開の法廷で審理されるのは3例目とみられる。
関係者によると、地裁が公判前に実施した専門家による少年の心理鑑定で、虐待などの生い立ちが事件に及ぼした影響があると指摘された。検察側は遺族の処罰感情を踏まえ、懲役刑などの刑事罰を求めると予想される。一方、弁護側は虐待などを受けた少年の成育歴から「治療が必要」として、家裁へ送致した上で第3種少年院送致などの保護処分を訴える方針だ。
捜査関係者などによると、少年は小学生の頃から親元を離れて児童養護施設などを転々とし、暴力行為のトラブルを度々起こした。事件2日前に少年院から仮退院して福岡県内の更生保護施設に移ったが、前日に施設を抜け出して事件を起こしたとされる。発達障害の診断歴があり、中学校の授業にもほとんど出席していなかった。
遺族は21年1月に少年の検察官送致(逆送)が決まった際、「刑事罰を受けるべきだ」などとコメントを出している。公判には被害者参加制度を利用して参加しており、意見陳述して刑事罰を求めるとみられる。
少年は窃盗罪や暴力行為処罰法違反、銃刀法違反でも起訴された。起訴状によると、20年8月28日午後7時ごろ、福岡市中央区の「MARK IS(マークイズ)福岡ももち」の店舗で2本セットの包丁を万引き。1階の女子トイレで同市の女性を包丁で刺して殺害し、別の女性も包丁で脅したなどとされる。
改正少年法が22年4月に施行され、18、19歳の少年は「特定少年」として一部事件では起訴後の実名報道が可能になった。ただ、今回は起訴が施行前のうえ、事件当時15歳だった少年にはそもそも適用されない。少年は匿名のまま審理され、法廷では傍聴席との間に遮蔽(しゃへい)措置がとられた。【平塚雄太、河慧琳】