心臓病の小4が天下一品グループ社長と対面 折り紙がつないだ縁

心臓病と闘いながら多彩な折り紙作品を作る山口県山陽小野田市の北永健人(けんと)さん(9)=市立本山小4年=が念願の対面を果たした。会ったのは京都発祥のラーメンチェーン店「天下一品」を全国展開する天一食品商事(大津市)の木村一仁社長(35)。天下一品のラーメンが大好きな北永さんが店員を模した折り紙作品を寄贈したことがきっかけになった。「神様のような人に会えた」と大喜びする北永さんに、木村社長はある「サプライズ」を準備していた。
北永さんは4月、ユニホーム姿で「天下一品」の文字が入った丼を持つ店員を模した作品2点(縦30センチ、横40センチ)を10日間かけて折り紙で制作し、山口県下関市の長府店に寄贈した。これを知った木村社長が「通院を続け、大変な中、情熱を注ぐことは素晴らしい」と感動し、北永さんの母、千賀(ちか)さん(46)に「会いたい」と伝えていた。
対面がかなったのは7月5日。長府店を訪れた木村社長から「ずっと会いたかったよ」と声をかけられ、北永さんは満面の笑みを浮かべた。北永さんはこの日のために、木村社長や店員を七福神に見立てた折り紙作品(縦80センチ、横55センチ)を新たに作り、木村社長にプレゼント。すると、木村社長からは北永さんが作った折り紙作品のイラストを底にあしらった特製のラーメン用の丼が「サプライズ」で贈られた。北永さんが店を訪れれば、この丼で大好きなラーメンを食べることができる。
北永さんは創業者で天下一品グループの木村勉会長(87)ともオンラインで話した。北永さんが「ラーメン店で働くことが将来の夢です」と話すと、会長は「夢をかなえてね。応援するよ」と激励した。最後は木村社長が自ら厨房(ちゅうぼう)に入り、北永さんのためにラーメンを作った。北永さんは興奮気味に「うまいよ」と繰り返した。約2時間の面会。木村社長は「作品から北永さんの前向きな気持ちが伝わる。元気と勇気をもらった」と話した。
北永さんは心室を隔てる壁に穴が開くなどの「ファロー四徴症(しちょうしょう)」という先天性の心臓病があり、3歳の時にペースメーカーを植え込む手術を受けた。
地元の小野田めぐみ幼稚園に入園するにあたり、両親は園での生活について佐野太園長(56)らと協議を重ねた。「腹部にペースメーカーがあるので、鉄棒はできない」。そんなふうに「できないこと」を挙げる両親に佐野園長は言った。「できることを数えましょう」。両親はその場で泣き崩れた。
北永さんは他の園児と変わらない様子で園生活を楽しんだ。千賀さんは「園長さんの言葉が歩みの始まりだった」と振り返る。「できることを伸ばす」ことが両親の教育方針になり、その一つが折り紙だった。
北永さんの作品の一つが、「くまモン」(熊本県)や「ひこにゃん」(滋賀県彦根市)、「ちょるる」(山口県)など全国各地のゆるキャラの特徴を捉えた折り紙を地図に貼り付けた作品「日本全国ご当地キャラクター~コロナにまけるな~」(約180センチ四方)だ。2021年11月に地元の図書館に展示された他、作品を紹介した毎日新聞の記事がきっかけとなって奈良県高取町でも展示された。
作品を通じた交流の輪は広がり続けている。北永さんは宿題を終えると、ひたむきに折り紙づくりに励む。そんな姿に感銘を受けた五十崎(いかざき)良さん(40)は局長を務める山口県宇部市の宇部則貞(のりさだ)郵便局で15日まで作品を展示している。7月中旬からは中国5県の郵便局での巡回展示も企画。五十崎局長は「中国地方の人々に勇気と元気を与えたい」と意気込む。
千賀さんは「一つの折り紙をきっかけに、こんなに支援の輪が広がったことに驚いている。健人の可能性を信じて、長所を伸ばしていきたい」と話している。【柳瀬成一郎】