沖縄県久米島町の沿岸で瀕死(ひんし)のアオウミガメが30匹以上見つかった問題で、地元漁業者が「漁の網に絡まり、仕方なく刺して駆除した」という趣旨の話をしていることが、関係者への取材で明らかになった。県警那覇署や町が目撃者から事情を聴くなどして詳しい状況を調べている。
ウミガメは14日昼過ぎ、網に絡まるなどして瀕死の状態で見つかり、30匹超のほとんどに首の付け根付近に刺されたような傷があった。関係者によると、漁業者は「漁の網に大量に絡まっていた。一部は外して海に返したが重い個体は動かせず刺して駆除した」と話しているという。
アオウミガメは国際自然保護連合(IUCN)や環境省のレッドリストで絶滅危惧種に指定され、産卵地の沖縄や鹿児島などで保護活動が続けられている。しかし久米島町の漁業関係者によると、今年は近海に現れるウミガメが例年になく多く、特産の養殖モズクなど海藻が食べられる被害が相次いでいる。
地元の漁業に詳しい関係者は「ウミガメがかかったままにすると漁網が傷つき使えなくなる」と話す。重いウミガメに絡んだ網は外すのが難しく、網を切って対応することが多いが「刃物で刺すというのはあまり聞かない」とした。別の関係者は「最近はウミガメが多いが捕獲には制限もある。海藻の被害もあり対応に苦慮しているのも事実だ」と悩ましげに語った。
久米島漁協は「担当者が不在ではっきりしたことは分からない」としている。【中里顕】