給湯器の盗難急増、内部の銅売却目的か…空き部屋狙うケース目立つ

栃木県内の空き部屋などの外壁に取り付けられた給湯器が盗まれる被害が増加している。県警によると、県内の被害の認知件数は、今年1~6月の半年間で25件、計72台。1年間で3件(9台)だった昨年と比べれば、急増ぶりは明らかだ。内部の銅を狙って業者に売却しているとみられ、県警が注意を呼びかけている。(高田結奈)
「むしり取るような感じではなく、工具を使ったようにきれいに外されていた。まさか給湯器が狙われるとは……」。ガス供給会社の担当者は今年3月、高根沢町のアパートのオーナーから連絡を受け、現場に駆けつけた。盗まれた給湯器は隣接する公共施設の壁との間にあり、周囲からは見えにくい場所だったという。
県警捜査3課などによると、市町別では大田原市が7件で最も多く、真岡市とさくら市がそれぞれ4件で続いた。一度に複数盗まれることが多く、目立つのは、集合住宅の空き部屋が狙われるケースだ。盗まれても気付きにくいため発覚が遅れがちで、犯行時期も特定しにくい。
6月には、鹿沼市のガス事業所のコンテナ置き場に積んであった給湯器7台を盗んだとして、さくら市、無職の男(32)が起訴された。逮捕した鹿沼署によると、給湯器は金属買い取り業者に全て売却。調べに対し、男は「ほかにもやった。取り外して売った」などと話したという。以前、設備関連の会社で働いていたことから、容易に取り外せたとみられる。
給湯器の内部には銅製の釜が含まれており、年式やメーカーを問わず買い取ってもらえることが多い。ガス機器製造大手のリンナイ(名古屋市)の担当者によると、給湯器は軽いもので15キロ、重いと40キロほど。宇都宮市の金属リサイクル業者では、1キロ当たり230円前後で買い取っており、給湯器本体の重さで価格が決まるため、容量が大きいほど高値で売れるという。
この業者は「買い取りの際には身分証の提示を求めているが、業者でもない一般の人が大量に持ち込むなどしない限り、一見して盗品かどうかを見抜くことはまず難しい」と話す。
県警は対策として、住宅へのセンサーライトや防犯カメラの設置のほか、所有者の見回りの強化を推奨。担当者は「給湯器が盗まれるという感覚が一般的に浸透していない。対策の一歩として、まずは危機意識を持ち、少しでも不審な動きをする人物を見かけたら、ためらわず通報してほしい」と呼びかけている。