北海道・知床半島沖で観光船「KAZU Ⅰ(カズワン)」が沈没した事故は、乗客乗員計26人のうち12人が行方不明のままとなっている。事故は23日で発生から3カ月となる。
「役に立てたか」悔しさ募る
カズワンが沈没したあたりの海域で操業する漁師たちは今も、行方が分からなくなったままの人たちの手がかりを探し、波間に目をこらす。漁師歴7年の加藤諒太さん(26)もその一人。事故が起きた4月23日の翌朝から捜索に協力してきた。「どんな形でも、乗っていた人たちにつながるものを見つけたい」。強い思いの裏には、漁師になったばかりの頃の経験と、その時に知った「海への恐れ」がある。
加藤さんは祖父、父親と続く漁師一家で育った。子どもの頃から船釣りで海の楽しさを知った。一方で、「天気の良い日も急に風が吹き、白波が立つ。船にしがみついていないと落ちそうな荒れ方もする」ことも体感した。
2015年、漁師として初めて海に出た。仕事に慣れ始めたころ、観光船の船長が船に巻き付いたロープを取ろうと海に飛び込み、行方不明になる事故があった。他の漁師と共に捜索に協力したが、船長を発見することはできなかった。「無事を祈って待っている人がいるのに見つけられなかった」。歯がゆさだけが残った。
今回の事故での捜索には、「新人の時は手がかりも見つけられなかった。今回は何としても」という思いで関わってきた。海で救命胴衣などを見つけることはできたが、今も多くの行方不明者がいる状況に「どこまで役に立てただろう」と思い悩むこともある。事故発生から1カ月ほどが過ぎるとサクラマスやホッケなどの春の定置網漁が本格化し、捜索に充てられる時間が減った。悔しさが募る。
今もなお、漁の合間に捜索を続けているのは「知床の海を嫌いなままでいてほしくない」という気持ちがあるからだ。時に厳しい表情も見せる故郷の海だが、「きれいで、魚はどこよりもおいしい」と自負している。そして、「この海のためにも、こんな事故は二度と起きてほしくない」と願っている。【山田豊】