「私には乗り越えられない」 やまゆり園遺族ら願う「寄り添う社会」

相模原市の障害者施設「津久井やまゆり園」で45人が殺傷された事件は26日、発生から6年を迎えた。昨年再建された園舎で追悼式が催され、遺族らは黙とうをささげた。園内に設けられた慰霊碑を含む「鎮魂のモニュメント」には朝から大勢が訪れ、花を手向けて犠牲者の冥福を祈った。
追悼式が事件の発生に合わせて26日に催されるのは初めて。県などが主催し、遺族のほか施設入所者の家族会、施設を運営する「かながわ共同会」の関係者ら計62人が出席した。園内で新型コロナウイルスの集団感染が発生したため、入所者の参加は見送られた。
共同会の山下康理事長は式辞で「6年たった今も、私たちが皆様を守れなかったことに深い後悔と自責の念を持っている」と述べ、偏見や差別のない社会の実現を誓った。
この日は朝から大粒の雨が降る中、今年3月に完成したモニュメントに多くの人が訪れた。事件で一時重体となった元入所者の尾野一矢さん(49)の父剛志さん(78)と母チキ子さん(80)も手を合わせた。剛志さんは「悲しみと怒りの雨だと思う。事件を決して忘れてはいけない。風化させてはいけない」と語った。
モニュメントには遺族が同意した犠牲者7人の名前が刻まれている。県は一部の遺族が名前を強調した報道を望んでいないとして、名前の報道を控えるよう報道各社に要請した。
事件は2016年7月26日未明に発生し、元職員の植松聖(さとし)死刑囚(32)が就寝中の入所者らを刃物で襲った。植松死刑囚は入所者19人を殺害し職員2人を含む26人にけがをさせたとして、殺人罪などで20年3月に死刑判決が確定した。22年4月に再審を請求している。【鈴木悟】
なぜ娘が…
「悲しみは時が解決してくれると言うが、私には乗り越えられない」。26歳の娘を失った母親は、愛娘の在りし日を思い出してむせび、絞り出すように語る。
娘は3歳で自閉症と診断された。言葉による意思疎通は苦手だったが、身ぶりや表情で感情を伝えてきた。八百屋で好物のいよかんをねだり、買い物袋を受け取った時にニコッと浮かべた笑顔は今も忘れない。
母親はこの1年、娘の写真に語りかける機会が増えた。会えない時間が長くなり、娘へのいとしさは膨らむばかりだ。「死を認めたくない気持ちがあるのかもしれない」とつぶやく。
気持ちは揺れ続ける。「そっとしておいてほしい」と願うこともあれば「事件を忘れてほしくない」とも思う。命日が近づいて沈鬱な気分になるのは変わらない。「泣いてばかりだと娘が悲しむから前向きに過ごしたい。でも難しい。なぜ娘が亡くならなければいけなかったんだろう……」
事件を起こした津久井やまゆり園の元職員、植松聖(さとし)死刑囚(32)=殺人罪などで死刑が確定=は障害者を蔑視する発言を繰り返した。母親は「いてくれることがありがたい、いてくれるだけでいい。娘はそんな命の大切さを教えてくれた」と反論し、こう願う。「障害がある人を優しく見守り、寄り添う社会になってほしい」【木下翔太郎】