街に「検査難民」あふれ…発熱外来に患者殺到「全て診たら現場破綻」

新型コロナウイルス「第7波」の影響で、東京都では過去最多となる15万人以上(26日時点)が自宅療養を余儀なくされている。多くの自治体で1日あたりの新規陽性者の数は連日のように過去最多を更新しており、現場の医療関係者からは「全ての患者を診ていては現場が破綻する」との声もあがっている。【秋丸生帆】
往診やオンラインで救急患者の対応にあたるファストドクター社(東京都港区)のオフィスでは27日、上柳圭一医師(31)がパソコンの画面越しに20代の女性患者のオンライン診療にあたっていた。女性は陽性判定を受けて数日間自宅療養していたが、せきが止まらずに診療を予約。約20分の問診などの後、せき止め薬を処方された。こうした患者を1時間で3~4人診ることが常態化しているという。
上柳医師は「第7波はとにかく感染者の数が多すぎる。このペースで増えれば近いうちに薬の在庫不足なども想定される」と話す。
7月に同社に寄せられた往診やオンライン診療を含む医療相談件数は、第6波のピーク(1月)の約2万件をすでに超え、約2万4000件にのぼっている。同社では、自治体と連携した自宅療養者の診療が主な業務の一つ。陽性判定にともなう自宅療養者の急増によって、一般の予約を停止せざるを得ないことも多くなっている。
上柳医師によると、現在流行の原因となっているオミクロン株の派生型「BA・5」は、第6波で主流だった「BA・2」に比べて発熱や咽頭(いんとう)痛の症状が強く、症状が強く出る期間も1~2日長い印象だという。軽症者が多いことは変わらないが、痛みが長引くことで水分の補給ができず、夏の暑さもあって脱水症状などに陥る危険性があるという。
入院して点滴が必要な患者がいる時も、すぐに病床が確保できないこともある。その場合は医師のチームが往診して処置にあたるが、「そもそも予約をとれない人や医療にアクセスできない人もおり、医療資源の分配の余裕がなくなっている」(上柳医師)。
第6波のピークで発熱外来の予約が3日先まで埋まったという足立区のはなはた羊クリニックでは、26日時点でそれを超える5日先まで予約が入った。外来には、発症から9日間診察を受けられなかったという患者もおり、優先度の高い患者は、予約の隙間(すきま)時間を使って診察をすることもある。この日、最後の患者の診察が終わったのは午後10時ごろ。都の無料PCR検査などは無症状の人が対象で、症状が出たら発熱外来が頼り。岸洋二院長は「街には検査を受けたくても受けられない『検査難民』があふれている状況だ」と話す。
発熱外来を訪れる患者は1日約60人。午前中診察した約30人が全員陽性だった日もあり、陽性率が9割を超えることもある。第6波でここまで陽性率が高くなることはなかったという。
医師2人、看護師5人の同クリニックでは、発生届の処理などのため、1月は5人だった事務員を20人まで増やしたが、処理が追いつかない。「1日に診ることができる患者数に限りがある。希望する全ての患者を診ていては医療従事者もスタッフも疲弊して現場が破綻してしまう」と岸院長は話す。
幸い、患者の大半は第6波と同様に軽症者が多い。第6波から保健所の代行で医療機関が健康観察をできるようになった。患者側も大きな混乱なく自宅で比較的余裕をもって療養している様子だという。岸院長は「喫緊の課題は患者が多すぎて予約が埋まってしまうことだ」と指摘し、「感染症法上の取り扱いを(季節性インフルエンザ並みに)緩和して負担を減らすか、感染の勢いが自然に弱まるまで耐えるしかない」と話す。