<独自>五輪スポンサー「安い料金なら」 AOKI側の意向、組織委元理事が仲介

東京五輪・パラリンピック組織委員会元理事の資金受領事件で、資金を提供していた紳士服大手「AOKIホールディングス」の「安い料金ならスポンサーになれる」との意向を、高橋治之(はるゆき)元理事(78)が組織委関係者に伝えていたことが29日、関係者への取材で分かった。組織委内でスポンサー募集を担当するマーケティング局に出向していた、高橋氏の古巣である電通社員に伝えていた。
組織委理事は「みなし公務員」に当たり、職務に関し金品を受け取ることは禁止されている。東京地検特捜部は、高橋氏の仲介行為が組織委理事としてのAOKI側への便宜にあたるか、慎重に調べている。
東京五輪のスポンサーには4種類あり、種類に応じて契約額の相場や、五輪関連で担える業務が異なる。AOKIが契約したのは契約額が最も安い「オフィシャルサポーター」だった。
関係者によると、平成26年6月に組織委の理事に就任した高橋氏は、旧知だったAOKIの青木拡憲(ひろのり)前会長(83)に「スポンサーになってほしい」と依頼。青木氏は「料金が安いカテゴリーのスポンサー契約なら受ける」と返答したという。
高橋氏は組織委マーケティング局の幹部だった電通出向社員に対し、AOKIが安いカテゴリーのスポンサー契約なら受ける意向があることを伝えた。その際、契約料については「値引きをする必要はない」とも付け加えたという。
その後、組織委と契約の条件交渉へ進んだAOKIは30年10月、組織委とスポンサーシップ契約を結んで東京五輪のオフィシャルサポーターとなり、大会の審判服の製作などを担当。大会エンブレムを使った商品も販売した。
関係者によると、組織委からスポンサー選定を担う「マーケティング専任代理店」に指定されていた電通は当初、スポンサー料が高いカテゴリーでスポンサーになってくれるアパレルメーカーを探していたが、候補の企業に断られていた。AOKI以外の複数の紳士服メーカーに打診していたが、折り合いがついていなかったという。
特捜部は、高橋氏がAOKI側の意向を組織委関係者に伝えたことで、AOKIがスポンサー契約をしやすくなった可能性があるとみて、経緯を調べている。
関係者によると、高橋氏は任意聴取に対し、「AOKIからの資金受領とスポンサー選定時に組織委理事として果たした役割には関連がない」との認識を示しているという。