熱中症とコロナ判別できず受け入れ先集中、救急搬送困難2・7倍…主要都市で先週6000件超

過去最大の新型コロナウイルスの感染拡大に、真夏の暑さによる熱中症が重なり、救急や医療現場の

逼迫
(ひっぱく)が深刻化している。熱中症とコロナは症状が似ていることから、救急搬送の受け入れ先が限定され、救急搬送が困難な事例の件数が過去最多となっている地域もある。(スタッブ・シンシア由美子、木村雄二)

「発熱者らコロナ疑いの人からの救急要請が相次ぎ、搬送先がすぐには見つからない厳しい状況だ」。さいたま市消防局の救急課の男性隊員は、そう危機感をあらわにする。
感染の急拡大で、同消防局では救急車30台が連日ほぼ出払い、非常用の救急車を出動させる日もある。発熱者だけでなく、けが人でも20か所以上の医療機関に照会しなければ受け入れ先が見つからないケースも。救急隊の現場の滞在時間が30分以上で、医療機関に受け入れ要請を4回以上実施した救急搬送困難事案は18~24日で前週比1・4倍の199件に上った。

搬送困難が生じているのは、熱中症とコロナ疑い患者からの要請が相次いでいるためだ。発熱や

倦怠
(けんたい)感、吐き気があるのはどちらも同じで、特に室内で脱水症状を起こした高齢者の場合は判別がつきにくい。コロナの可能性が否定できないため、搬送先がコロナ病床がある病院に集中しやすいことが背景にある。

全国の主要都市の52消防本部でも救急搬送困難事案(18~24日)が計6035件と、前年同期の2・7倍に上る。東京都では24日時点で、1日当たりの件数(1週間平均)が過去最多の309・7件に達し、都医師会の猪口正孝副会長は「通報から現場到着まで時間がかかる状況が常態化している」と話す。

コロナと熱中症対応で医療機関側の受け入れは限界に近づきつつある。
浜松市の浜松医療センターは、1日平均20件ある救急搬送の依頼のうち、発熱者を中心に5件ほどは断る状態だ。35床あるコロナ病床に入院しているのは20人だが、人手が足りず、実質的には満床状態という。
熱中症とみて受け入れた後、コロナと判明しても、入院させられないため、加藤俊哉・救命救急センター長(56)は「区別がつきにくい以上、発熱患者は基本的に断らざるを得ず、心苦しい」と吐露する。
発熱外来を開設する池袋大谷クリニック(東京都豊島区)では、検査でコロナ陽性と判明し、さらに脱水を伴って熱中症を併発している患者もいる。症状を緩和させるため点滴をしたくても、医師は1人で院内も手狭で、他の発熱患者の診療を続けながら点滴することができない。
熱中症の症状が軽い場合は水を1リットル飲むだけで帰ってもらうこともある。大谷義夫院長(58)は「コロナは軽症でも、脱水症状が加わると患者のつらさは倍増する。手厚い治療をしたいが、対応が難しい」と話す。

エアコン・換気で対策を

新型コロナの感染対策をしながら、熱中症をどう防げばいいのか。
日本救急医学会などがまとめた「熱中症対応の手引」によると、室内ではエアコンの使用が熱中症予防に有効とした上で、会社や学校、飲食店など人が集まる場所では冷房中もこまめな換気を呼びかける。自然な風の流れができるように2方向の窓を開け、室温を測定しながら、エアコンの温度設定を調節する。室温は「28度より低めに設定することも考慮すべきだ」とした。
一方で、マスクを外しても、熱中症のリスクが低くなるわけではないことも強調する。健康な若者を対象にした国内外の研究では、暑い中で軽い運動をしたとき、マスク着用の有無によって、体温上昇に大きな違いはなかったという。こまめな水分補給や暑い中での運動を避けることが何よりも重要だ。
手引をまとめた帝京大病院の神田潤講師は「熱中症予防にはマスクを外すよりも、基本的な対策を徹底してほしい。疑わしい症状がある場合は自分で判断せず、速やかに医療機関などに相談することが大切だ」と話している。(竹井陽平)