新型コロナウイルスの感染「第7波」に伴い、愛知県では7月末にコロナ病床使用率が逼迫(ひっぱく)の目安とされる50%を超えた。第6波に比べ重症者数は少ないものの一日の新規感染者数の拡大ペースは速い。医師の一人は取材に「医療崩壊は既に始まっている。感染者を減らす方法を考えないと崩壊はさらに進む」と危機を訴える。
愛知県では7月20日にコロナの新規感染者数が1万人を突破して以来、ほぼ連日1万人台で推移。病床使用率は28日に52・6%と初めて50%を超え、30日時点で55・8%まで上昇している。
名古屋市立大東部医療センター(名古屋市千種区)では、コロナ患者を受け入れる54床のうち、28日現在で30床が埋まる。重症者は1人だが、認知症の患者を多く抱え、24時間目が離せないなど負担は大きい。
「この10日間であっという間に増えた」と話すのは、同センターの長谷川千尋医師(59)。新規感染者の爆発的な広がりに伴い、家庭内などから感染する職員が増えているといい「医療従事者が減れば、病床が全部動かせるか分からない」と懸念を示す。
長谷川医師が気がかりなのが、政府が第7波への対応として、まん延防止等重点措置などの行動制限を視野に入れていないことだ。長谷川医師は「効力のある行動制限がない中で感染対策をしっかりやるのは無理だ」と断言。社会を守るには行動制限が必要だとの認識を示した上で「行動制限をしないのであれば、それと引き換えに亡くなる人や病院にかかれないリスクがあることを考えながら、一人一人が責任ある行動をするしかない」と訴える。
感染急拡大で保健所も対応を迫られている。名古屋市は保健所の業務逼迫を回避するため7月末から、これまで全てのコロナ患者に実施してきた電話での健康観察について、中等症以上や高齢者など重症化リスクのある人のみに変更。それ以外の感染者には一斉送信のショートメール(SMS)で療養生活に必要な情報を送っている。
熱田保健センターでは、電話対応が従来の5分の1程度に軽減できるとみている。ただ、7月に入ってからの感染急拡大に伴い「SMSのどこにほしい情報が載っているのか分からない」といった問い合わせのほか、従来の書類処理、酸素飽和度を測る「パルスオキシメーター」の送付などがあり、業務負担は軽減されたもののやるべきことは多い。
行動制限があった第6波では、経済活動の停滞などに伴い手の空いた区役所などの部署から13人の応援が入ったが、今回の応援は7人のみ。市によると、今後も保健所への大規模な応援は見込めず、熱田保健センターの菱田正実・保健予防課長は「他の業務にあたる職員に仕事の合間に手伝ってもらうなど試行錯誤しながら続けている」と話す。【酒井志帆、田中理知】