「鶴の頭の部分」には何がある…そこは都内から1時間余、「都会すぎず田舎すぎず」の街

「つる舞う形の群馬県」。群馬県が鶴の形をしていることは、上毛かるたの読み札でよく知られている。ところで、鶴の頭の部分はどうなっているのだろう。地図を見ると、板倉町の「板倉ニュータウン」が目に留まり、訪ねてみた。そこは、北毛や中毛とはまた違った雰囲気が漂っていた。(小山内裕貴)
前橋から北関東道と東北道を使って車で約1時間10分。目の前に渡良瀬遊水地のヨシ原が広がり、東武線の特急「スペーシア」が日光方面への観光客を乗せて疾走する。北と東は栃木県、南は埼玉県だ。
板倉ニュータウンの「玄関」は板倉東洋大前駅。本県最東端の駅で、東武日光線で本県内にある唯一の駅でもある。ニュータウンの分譲が始まった1997年に開業した。
北東京のターミナル・北千住駅へは電車で1時間あまり。1キロ先は栃木と埼玉で、「県外」がぐっと身近になる。高瀬勝教さん(46)が営む駅前の美容室には宇都宮や東京からも客が来る。高瀬さんは「『都会すぎず田舎すぎず』の街です」と住み心地の良さを語ってくれた。
ニュータウンは広さ約220ヘクタール。県企業局は当初、3400戸を建てる計画だったが、バブル崩壊後の金融危機の影響で販売不振が続き、現在の居住は約1000戸(約2400人)にとどまる。
計画は縮小されたが、見方を変えれば、田園風景と広々とした空間が残った。そこに魅力を感じて移り住んだ人も多い。高瀬さんも神奈川からUターンし、約10年前からニュータウンの一戸建てに住んでおり、休日は4人の子供と散歩したり農家で農作業体験をしたりする。「公園は広く、池や緑が多い。子育てにはとても良い環境だ」と言う。

最近は企業の進出も続く。県企業局は2010年と15年にニュータウン西側の計47・9ヘクタールを住宅用地から産業用地に変更し、21年にすべての用地が売れた。
16年に敷地面積約2ヘクタールの工場を稼働させたダンボール製造「グリーンパッケージ」(大阪府高槻市)の川瀬朋生工場長(43)は、道路の広さと、高速のインターチェンジが近いことを利点に挙げる。現在は120人が板倉町内や邑楽町などから通勤する。川瀬工場長は「広い敷地があり、住民にご迷惑をあまりかけずに操業できる」と話す。
ニュータウンの現在の懸念は、東洋大の板倉キャンパスが24年に撤退することだ。駅前を多くの学生が歩く光景は、見られなくなるかもしれない。住民からは「若い人がいなくなる」「街が廃れるのではないか」といった声が聞かれた。
県企業局は現在、分譲の促進に向け、クリーンエネルギーの活用と災害時のバックアップ機能の確保に力を入れている。24年度から太陽光発電を利用して水素を製造する実証実験をニュータウンで始める予定で、貯蔵した水素は電気に戻して住宅に供給し、夜間や災害時の電源として活用する。
分譲開始から今年で25年。

紆余
(うよ)曲折があったが、他県に気軽に行ける便利さは変わらない。大事なのは、住民が住んでいて良かったと思える暮らしやすさだ。のどかな環境を維持してほしいと思いながら、ニュータウンを後にした。