処理水、焦点は漁業者の理解へ 知事、海洋放出自体は了解せず

東京電力福島第1原発でたまり続ける処理水の海洋放出を巡り、福島県の内堀雅雄知事と立地自治体の同県大熊・双葉両町長は2日、東京電力ホールディングスの小早川智明社長に対し、放出に必要な工事の開始を事前に了解する意向を伝えた。東電が昨年12月、3者に了解を求めていた。東電は今後、第1原発から沖合約1キロ地点に処理水を放出するため、海底トンネルの設置などの本格的な工事に着手する。海洋放出は2023年春の実施を目指している。
県と両町による「事前了解」は、東電と福島第1原発の立地自治体による廃炉に伴う安全確保協定に基づく。施設の新増設や廃止に取り組む場合、東電側は技術的な安全性についてそれぞれの自治体から了解を得る必要がある。一方で政府と東電は県漁業協同組合連合会に対し、「関係者の理解なしには、いかなる処分も行わない」と約束している。今後は県漁連の理解を得られるかどうかが一つの焦点となる。
この日、県庁を訪れた小早川社長に対し、内堀知事と大熊町の吉田淳町長、双葉町の伊沢史朗町長は、処理水を海へ放出する設備の設計や手順を盛り込んだ第1原発の実施計画について「技術的な安全性は確認した」と回答した。そのうえで、3者は高濃度の汚染水の新たな発生量の抑制や、汚染土壌などの2次廃棄物の適切な管理などについて要望した。
内堀知事は「新たな風評が生じることへの懸念や海洋放出に反対する意見、陸上保管による復興への影響を危惧する意見などさまざまある。県民、国民の理解が十分に得られているとは言えない状況だ」と強調。「国と東京電力の責任において関係者の理解が深まるよう丁寧かつ十分な説明を行い、その思いを真摯(しんし)に受け止め、対話を重ねてほしい」と訴えた。
会談後、内堀知事は記者団に対し「安全確保協定に基づき、東電が計画している設備に対して必要な安全対策が講じられているか確認を行った」と説明。処理水の海洋放出そのものを了解したものではないとの立場を強調した。一方、小早川社長は「廃炉作業が地元の皆さんの信頼を得て進められ、地域の復興が着実に進むよう安全最優先で取り組む」と話した。
海洋放出を巡っては、風評被害を懸念する地元の漁業者らを中心に反対の声が根強く出ている。こうした中、東電は昨年12月以降、事前了解が必要ないとされる準備工事を着々と進めていた。海底トンネルの入り口部分となる立て坑の整備や出口となる放出口の整備を進めており、これらの工事は今年10月にも終える予定だ。
処理水を放出するための海底トンネルの設置などについて記した第1原発の実施計画は、すでに7月に国の原子力規制委員会が認可している。実施計画の安全性については、県と立地自治体でつくる県原発安全確保技術検討会が議論を重ね、「周辺地域の安全は確保される」とした報告書をまとめ、県と両町に提出していた。【磯貝映奈、肥沼直寛】