住宅地にあふれ出す濁流、ボートで避難する高齢者…。3日から4日にかけて東北や北陸を襲った記録的な大雨は河川の氾濫や土砂災害、住宅浸水などの甚大な被害をもたらした。集落が孤立し、ライフラインが途絶えた地区も。「命の危険を感じた」「恐ろしくて眠れなかった」。繰り返される大雨被害に被災住民には徒労感が広がった。
山形…急流最上川、橋が崩落
日本三大急流として知られる最上川。山形県大江町の左沢(あてらざわ)地区で堤防を乗り越え、住宅地に茶色の濁流が流れ込んだ。自宅が浸水した元自動車学校教員、駒林俊一さん(73)は令和2年7月の豪雨でも浸水被害に遭っており、「またか」と肩を落とした。
3日午後10時ごろから雨脚が強まり、玄関まで水が迫った。妻のつや子さん(70)と車でJR左沢駅近くの駐車場まで行き、車中泊。4日午前3時ごろに様子を見に戻ると、1階の和室が水浸しだった。
「2年前よりは水位が低かったものの、あの時に持ち上がった堤防計画がもっと早く進んでいれば…」。駒林さんは、2年前の豪雨の跡が残る自宅の壁を眺めながらつぶやいた。
水に浸かった自宅玄関でほうきを手に泥水をかき出していた主婦(54)は「また来年も来るかもしれないと思うと、本当にいやになる」と天を仰いだ。
最上川上流の同県飯豊町手ノ子地区では「源居寺」の笹川明美さん(50)が「テレビの音が聞こえないほど雨音がすごく、雷も鳴っていた」と振り返った。3日夜に一時停電し、4日朝には断水。町内を車で見回ると、崩落した橋や膝丈まで床上浸水した家を目にしたという。
橋が流された小白川地区の女性(74)は「いつでも避難できるよう、着の身着のままで横になったが、恐ろしくて眠れなかった」と声を震わせた。
新潟…村上市内は数百棟が床上・床下浸水
4日朝までの24時間雨量が観測史上最多の410ミリに達した新潟県村上市。市内を横断する荒川周辺では一夜明け、家屋が浸水し、車が水没するなどの被害があらわに。県によると、市内で数百棟が床上や床下浸水の被害に遭ったという。
「命の危険を感じながら一夜を過ごした」と話すのは、川南岸の荒川地区で一人暮らしをする井関キヨさん(84)。4日午前2時半ごろ、自宅2階から階段越しに1階の様子をのぞくと、床上約40センチまで水が押し寄せていた。
午前10時ごろ、消防隊員が腰まで水につかりながら、ボートを引いて救助に現れ、10キロ以上離れた避難所に逃れた。井関さんは「家がどうなっているのか情報がない。いつになったら帰宅できるのか」と不安を口にした。
会社員の阿部健さん(39)も用水路の氾濫で自宅玄関が水浸しになり、車が水没した。妻や子供と一緒に近くの公民館に携帯電話の充電に訪れ、「家の周りは泥だらけ」と疲れた様子で話した。
荒川を挟んで対岸にある小岩内地区では、土砂崩れが発生。土砂が流れ込んだ住宅1階から80代男性が救助されたが、右足を骨折する重傷を負った。松本佐一区長(69)によると、住民約100人が孤立しているといい、「電気も水道も止まっている。食料や水などを市役所に救援をお願いしている」と語った。
小岩内地区の須貝正也さん(46)は家族で公民館に身を寄せた。4日朝に帰宅しようとしたが、土砂崩れで道路がふさがり、田んぼのあぜ道を歩かないと帰れない状況だった。「二次災害が怖いが、貴重品も取りにいきたい。どうしたらいいか」と話した。