小さな恐竜のような姿で、くりっとした愛らしい目が子どもたちに人気のニホンカナヘビ。全国各地の草むらで見られ、絵本の主人公も務めてきた。このトカゲに似た身近な
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(ちゅう)類が、東京23区内では絶滅が危ぶまれていることをご存じだろうか? 半世紀にわたりニホンカナヘビの生態を研究してきた東海大名誉教授の竹中践さん(72)は「誰もカナヘビを知らない、という事態になりかねない」と警鐘を鳴らしている。(デジタル編集部 斎藤健二)
都レッドリスト、区部で絶滅危惧1類に
今年6月上旬、記者は「カナヘビを飼いたい」とせがむ子どもと一緒に東京都練馬区内の公園でニホンカナヘビを探した。草むらをふんだんに残し、ニホンカナヘビが多くいると評判の公園だ。2日間で切り株などの上で日光浴する姿を3回目撃したものの、逃げられてしまった。4回目にそっと背後から近づき、捕まえることができた。
ニホンカナヘビは、日当たりの良い草地を好んで生息する。晴れた日には温まったコンクリートの上などで日光浴する様子がよく見られる。ただ、都市化や宅地化の進展で生息環境は急速に失われている。
都環境局は2021年に公表した「東京都レッドリスト(本土部)2020年版」で、「区部では急激に個体数が減少している可能性が高い」として、ニホンカナヘビを2010年版の「絶滅の危険が増大」の絶滅危惧2類から「絶滅の危機にひんしている」絶滅危惧1類に引き上げた。理由として「都市化により雑草が放置されている場所とえさとなる昆虫が減少したこと」をあげている。
竹中さんは「区部では古い家の庭や公園の草むらに少しいるという状況だった。しかし、庭のない戸建てに分譲されるなどさらに宅地化が進み、行き場を失ったとみられる」と話す。日本在来のカナヘビは、ニホンカナヘビを含めて6種。このうち沖縄県宮古諸島のみに生息するミヤコカナヘビは特に、観光開発や島外から持ち込まれた天敵などの影響で絶滅の危機にひんしている。
「またいつか出会える存在で」
ニホンカナヘビの減少は東京に限らず、全国的な傾向だ。都市化による生息場所の減少・消失のほか、農薬や天敵といった要因が複合的に作用し、姿を消していく。ただ、ニホンカナヘビは全国の広範囲で生息しているため、種全体としての絶滅のおそれはまだ低い。
絵本「かなへび」(福音館書店)を出版したり、環境省に助言したりするなどして保護活動を続ける竹中さんは、「自然環境の変化を知らせてくれる貴重な存在でもある」と言い、「自然に手を入れ、人間にとって心地よい緑地帯になったとしても、他の生き物は生息できなくなることもある。今ある自然な草むらが残っていき、子どもたちとまたいつか出会える存在であり続けてほしい」と訴えている。