第2次岸田文雄改造内閣が10日、発足した。新型コロナウイルス対策、ロシアのウクライナ侵攻や安全保障、宗教法人との関係性、北朝鮮による拉致問題…。課題山積の中、新たな陣容での船出に、関係者からは改めて実行力を期待する声が続いた。
丁寧な情報提供
新型コロナの流行「第7波」は、東京都で先週は新規感染者がほぼ横ばいで推移した。感染症法上の位置付けを「2類相当」から「5類」に引き下げるべきだとの意見があり、岸田首相も今後検討する意向を示している。
東京医科大の濱田篤郎特任教授(渡航医学)は「どのような分類が妥当か、早急に答えを出す必要がある」と指摘。また、厚生労働省がオミクロン株に対応したワクチンの接種を10月半ばから始める方針を示したことに関し、「4回目の追加接種が進められる最中であり、どちらの接種を受けるべきかなど国民に混乱も生じかねない。正確で丁寧な情報提供に努めてほしい」と求めた。
水際対策については、現状、日本に入国する人は現地出国前の72時間以内に検査を受けて陰性証明を得る必要があるが、感染が落ち着きつつある海外では多くの国が規制解除に動いている。濱田氏は「訪日外国人客の受け入れ増を含め、世界と歩調を合わせていくことも考えていかなければいけない」とし、「新内閣では中長期的視点に立った政策が示され、実行されていくことを願う」と述べた。
疑惑、明確に
改造内閣の顔ぶれでは、安倍晋三元首相の銃撃事件を契機に問題視された旧統一教会(現・世界平和統一家庭連合)との関わりを巡り、過去に主催イベントへ出席するなど接点があったと公表した旧閣僚7人が交代した。
麗澤大の川上和久教授(政治心理学)は、教会との関係も背景に、一部世論調査で岸田政権や自民党への支持率が低下したとの結果が出たことに言及。「世論や野党の追及に対する予防線を張り、問題に一定の区切りをつけようとしたのだろう」とみる。
一方で「今後、疑惑が表面化するケースもありうる」とし、「引き続き、迅速かつ明確な説明が求められる」との見解を示した。
また、喫緊の課題に挙げる安全保障面では、ロシアによるウクライナ侵攻に加え、中国が台湾周辺海域に発射した弾道ミサイルのうち5発が日本の排他的経済水域(EEZ)内に落下するなど、情勢はこれまでになく緊迫していると指摘。改造人事に関し、サプライズといえるのは41歳の小倉将信氏を少子化担当相に充てた程度だったとし、「安保関連は、ほぼ留任や経験者でまとめた。手堅い陣容。腰を据えて重要課題に取り組んでいってほしい」と語った。
首相の決意を
「風化」が叫ばれる北朝鮮による拉致問題。平成14年10月に被害者5人が帰国してから間もなく20年が過ぎるが、この間、ほかに特段の成果はなく、このところは親世代の死去が続く。
拉致問題担当相は引き続き、松野博一官房長官が兼務することとなり、横田めぐみさん(57)=拉致当時(13)=の弟で、家族会代表の拓也さん(53)は「継続性の意味では良かった」。一方で、「残る親世代の健康を考えると、時間は本当にわずかしかない」と一刻も早い事態進展を改めて訴える。
ライフワークとして拉致問題に取り組んできた安倍氏の死去に際し、昭恵夫人が「種をいっぱいまいているので、それが芽吹くことでしょう」と述べたことにも触れ、「岸田首相は思いを引き継ぎ、決意を持って臨んでほしい」とリーダーシップを求めた。
「新内閣には、安倍さんのやっていたこと、考えていたことを引き継いでもらうことが大切だ」。有本恵子さん(62)=同(23)=の父、明弘さん(94)も異口同音。日米関係を深化させ、北朝鮮に圧力をかけてきた安倍氏の外交政策を評価し、踏襲を要望した。
政権を担ってから1年弱の岸田氏については、「周りの経験ある政治家がしっかりと支えてほしい」とも述べた。