「療育」と称し、障害のある男子中学生の身体を拘束した上で脅したり、殴ったりして監禁したなどとして逮捕監禁などの容疑で福岡県警に逮捕された、福岡市のNPO法人「さるく」理事長、坂上慎一容疑者(57)=同市早良区=が「(少年の)人権を考えていなかった」などと反省の言葉を述べていることが、坂上容疑者の弁護士への取材で判明した。福岡地検は10日、坂上容疑者と、活動に共感して手伝っていたという小学校教諭、松原宏容疑者(37)=同県篠栗町=を逮捕監禁罪で起訴した。地検は両被告とも認否を明らかにしていない。
起訴状によると、両被告は共謀して2021年10月9日午前0時15分ごろ、長崎県に住む当時中学生で14歳だった男性方を訪れ、寝ていた男性の手足を結束バンドや荷造りベルトで縛るなどして拘束し、「しゃべると殺すぞ」などと脅したり、両目に粘着テープを貼り付けて頭部に袋状のものをかぶせて園芸用の鋼管で殴ったりした上で、福岡県久留米市の障害者施設「くるめさるく」に車で連行。途中、同県筑紫野市内の山道で男性を車から降ろし「ここに手と足縛って転がして埋めるぞ」などと脅し、同日午前3時半ごろまで監禁したとしている。
捜査関係者によると、男性の保護者は坂上被告らの行為に同意していた。
坂上被告の弁護士によると、坂上被告は逮捕直後から一貫して「療育目的だった」と説明し「依頼を受け、何とか治してあげたい気持ちだった」などと供述。ただ、現在は刑法に触れる行為だったと認識して反省の言葉も述べ、事業を見直す考えも示しているという。
関係者によると、坂上被告は08年6月にさるくを設立。旧姓の「長瀬」名義で活動し、ホームページやオンラインセミナーで「発達障害の子供と保護者の最後のとりで」などと宣伝していた。重度の知的障害・発達障害がある子供が問題行動を起こすのに悩む保護者と契約し、改善を図る事業を10年以上続けていた。【佐藤緑平、平塚雄太】