「終戦の日」の15日、海外で亡くなった身元不明の戦没者らの遺骨を納める千鳥ケ淵戦没者墓苑(東京都千代田区)では朝から、遺族や戦争体験者らが訪れ、それぞれの思いを胸に手を合わせた。気温が上がる中、マスク姿の参拝者たちは汗を拭いながら、77年前に終わった戦争と、そこから今に至る平和への思いを新たにしていた。
神戸市東灘区の吉岡慶子さん(80)は初めて墓苑を訪れた。軍属だった父が乗った船がフィリピン・ホロ島沖で沈没。遺骨は戻らず、石だけが遺品の代わりに家族の元に届いた。「昨年も一昨年も、新型コロナの感染拡大で来られなかったが、自分が動ける間に来たいと思っていた。亡くなった時はまだ幼く、父の思い出はないけれど、一緒に遊びたかった」と話した。
終戦の5日前に生まれたという東京都大田区の薬師寺勝次さん(77)は「私は、日本が戦争をせずに済んだ年月だけ生きてこられた。平和に生かされてきたということです」と、祭壇に向かって静かに頭を下げた。
8人きょうだいの末っ子で、物心がついてから、20歳以上離れた一番上の兄は戦死したと教えられた。平和への感謝と願いを抱えて毎年訪れているといい、「同じきょうだいで、生きられなかった兄と今日まで生きてきた私。一般市民がそういう目に遭う戦争というもんを、ない世にしていかなくちゃと思いますね」と話していた。【椋田佳代、春増翔太】