旧江戸城の史跡や、皇室に伝わる美術工芸品を収蔵する「三の丸尚蔵館」など見どころが多く、自然豊かな皇居・東御苑。新型コロナウイルス禍が収束すればまた多くの入園者が訪れると予想され、東御苑の〝正面玄関〟ともいえる大手門付近では、カフェや情報発信機能を備えた休憩所の建設が計画されている。増改築工事が進む三の丸尚蔵館の全面開館に合わせ、オープンは令和8年度となる予定で、周辺エリアの景色が大きく変わりそうだ。(橋本昌宗)
江戸城の中枢部分
「都心なのに静かで、風が気持ちよくてびっくり」。7月下旬、猛暑の中で大阪市から東御苑を訪れた夫婦はこう話し、鬱蒼(うっそう)と茂る木々を見上げた。
東御苑は旧江戸城の中心部分に当たる本丸と二の丸、三の丸の一部で構成される。城の正門で、現在も東御苑利用者の大半が出入りに使う大手門から中に入ると、すぐに工事中の三の丸尚蔵館が現れる。
奥へと進めば江戸城の石垣などの遺構に加えて、昭和天皇の発案で造成された「二の丸雑木林」、上皇さまのお考えを踏まえて整備された古品種の果樹園など、豊かな自然が目に入る。都会の喧噪(けんそう)は遠くなり、鳥のさえずりや虫の鳴き声が響く別世界だ。
東御苑は昭和43年の開園以来、昭和天皇や上皇さまのご意向も反映しつつ、少しずつ彩りを増してきた。平成に入って入園者数は増加傾向が目立つようになり、開園50年を迎えた平成30年には年間165万人が訪れ、そのうち4割以上が外国人だった。
発信の拠点に
宮内庁は増加する入園者の利便性向上とともに、皇室のご活動や皇居、江戸城の歴史、自然についての情報発信を強化するため、三の丸尚蔵館の向かいに新たな休憩所を建設することを決めた。大手門は東京駅から最も近く、3カ所ある東御苑の出入り口の中で一番利用者が多いことから場所を選定したという。
休憩所内は休める場所や売店に加えて、皇居で初めてとなるカフェを併設。さらに外国人観光客の増加にも対応し、多言語で皇室や皇居について解説するスペースも設ける。建物は平屋を基本としつつ、一部を2階建てとすることで、周辺が見渡せる眺望も確保。内装や外観は皇居の景観に配慮したものにする予定だ。オープンは、尚蔵館の増改築工事が全て終わった後の全面開館に合わせる。
尚蔵館は皇室に伝わる美術工芸品に加え、昭和天皇の后(きさき)、香淳皇后、秩父宮家などの遺品計約9800点を所蔵しており、平成5年の開館以降、収蔵スペースの不足などが顕在化。宮内庁は展示スペースの拡充も目指して、こちらも現在の尚蔵館の隣に床面積約2倍の新しい建物を建設して令和5年秋に先行開館し、その上で現在の尚蔵館を建て替えて一体とする計画だ。
東御苑の整備に関わる担当者は「これを機に、国内外の多くの人に皇室のご活動や守り伝えられてきた文化について理解してもらえるような施設にしたい」と話している。