東京五輪パラ組織委「汚職」の背景に代理店依存体質 〝第2の高橋容疑者〟出現の可能性も

なぜ〝暴走〟を止められなかったのか――。東京五輪・パラリンピック組織委員会元理事の高橋治之容疑者(78)が17日、大会スポンサーの紳士服大手「AOKIホールディングス(HD)」側から計5100万円を受け取ったとして、受託収賄の疑いで東京地検特捜部に逮捕された。昨夏の祭典を巡る一大スキャンダルに、専門家は組織委の体質を問題視した上で、今後もメガスポーツイベントで〝第2の高橋容疑者〟が出現する可能性を指摘。汚職事件の背景を追った。
特捜部は高橋容疑者の他に贈賄容疑でAOKIHD前会長の青木拡憲容疑者ら3人を逮捕した。高橋容疑者の逮捕容疑は2017年10月~今年3月の50回以上にわたり、AOKIHD創業家の資産管理会社から自身のコンサルタント会社「コモンズ」を通じて計5100万円を受け取った疑い。本人は容疑を否認しているという。
スポンサーの選定などは事実上、大手広告代理店・電通からの出向者が多数在籍した組織委マーケティング局が担っていた。特捜部はAOKI側の意向を受け、電通元専務の高橋容疑者がマーケティング局に働きかけた疑いがあるとみている。
今回の事件について、スポーツ法を専門とする早大スポーツ科学学術院教授で弁護士の松本泰介氏は「特捜部が捜査に入った段階でこうなることは予想できていました。こうした事件は内偵捜査を行い、多くの関係者から事情を聴いて容疑を固めていると思われます。そして家宅捜索が入り、逮捕に至ったわけです」と解説する。では、なぜ高橋容疑者は組織委で〝暴走〟してしまったのか。松本氏が続ける。
「本来であれば理事が互いにきちんと業務を執行しているかチェックすることが必要なんですが、組織委のような〝寄り合い所帯〟になると『これは〇〇さんの専門だから』と任せ切りになってしまうんです。公益財団法人で理事や監事がいても中身のチェックが十分に働いていたかどうかは難しいところ。縦割りで外からの監視がきく状況ではなかったと思います」。組織委の〝見て見ぬふり体質〟が不正の温床になっていたわけだ。
また、松本氏はスポーツ界が電通に依存しているとして「コンペのようなことはやっていると思いますが、かなり形式的で結局『この代理店に任せる』という話で落ち着いてしまうんです」と指摘する。
もちろん五輪やW杯、世界選手権といったメガスポーツイベントに代理店の協力は欠かせない。松本氏は博報堂やADKといった具体的な社名を挙げた上で「代理店を2つ、3つ併用していいと思いますし、それぞれの得意、不得意な点をちゃんと分析しながら生かしていくことが大事」と、一極集中の解消を提言した。さらに「そうした代理店任せが今後も改善しなければ、第2、第3の高橋容疑者が出てくることになるだけだと思いますけどね」と警鐘を鳴らした。
一方、高橋容疑者に関しては「同種の話が他に出てきてもおかしくないと思います」と〝別件〟で追及される可能性もあるという。本紙でも「電通の中でもかなりアンタッチャブルな存在。なかなか大変な人だったようで、下の人たちにとってはしんどい存在でもあった」と東京五輪関係者の証言を紹介したが、組織委の〝影のドン〟に新たな疑惑が浮上しても不思議はないだろう。ただし松本氏は「証拠が揃っているかどうか、立件が難しいケースもあるので、そういう場合は特捜部としても立件を見送るでしょう」と見解を述べた。
日本中が熱狂した五輪・パラリンピックから、ちょうど1年。スポンサー選定を巡る汚職事件は、日本のスポーツ界全体に暗い影を落としている。