東京オリンピック・パラリンピックのスポンサー選定を巡る汚職事件で、受託収賄容疑で逮捕された大会組織委員会元理事の高橋治之容疑者(78)が、AOKIホールディングス(HD)が公式ライセンス商品として販売を目指していた女性用スーツの審査を早めるよう、組織委に口利きした疑いがあることが関係者への取材で判明した。スポンサー企業からの膨大な数のライセンス商品の申請で業務が滞る中、組織委がAOKIHDの女性用スーツを優先的に審査した可能性がある。
東京地検特捜部は、AOKIHD側への元理事による便宜の一つとみて、当時の組織委幹部らを事情聴取し、裏付けを進めている模様だ。
関係者によると、AOKIHD前会長の青木拡憲(ひろのり)容疑者(83)=贈賄容疑で逮捕=は、同社がスポンサーに決まる約1カ月前の2018年9月、東京都内の飲食店で公式ライセンススーツの販売など、五輪で手がけたい要望内容を記載したリストを元理事に手渡したとされる。元理事はこのリストを組織委に提示したとされる。
ライセンス商品の販売には国際オリンピック委員会(IOC)の承認が必要で、元理事の古巣である大手広告会社「電通」からの出向者が多い組織委マーケティング局がこの事前審査を担った。東京五輪のライセンス商品は約8000種類と過去の五輪と比べて最大規模で、組織委内では審査の遅れが問題になっていた。企業側は審査・承認が遅れると、大会終了時までの販売期間が短くなるデメリットがあった。
こうした状況の中、AOKIHDに関しては男性用スーツの審査が通った後、女性用も急ぐよう元理事から組織委側に働きかけがあったという。これを受けて組織委は審査を早め、わずか数日で通した疑いがある。AOKIHDは19年夏に五輪のエンブレムが入った男性用スーツの販売を開始し、同年11月には女性用の販売も開始した。
元理事は17年1月ごろから、前会長ら贈賄側のAOKIHD幹部3人からライセンス商品の製造・販売などで有利な取り計らいを受けたいとの依頼を多数回受け、17年10月~今年3月に計5100万円の賄賂を受け取ったとして逮捕された。元理事は逮捕前の特捜部の聴取に「審査が全体的に遅れていると組織委に注意したことはあるが、AOKIHDのためではない」と便宜を図ったことを否定していたとされる。【二村祐士朗、井口慎太郎、松尾知典、島袋太輔】