ネット通販、凶器の「抜け穴」に 進まぬ規制、自治体間で差も

護身用などの側面がある反面、凶器にもなる特殊警棒やナイフ。各都道府県が18歳未満への販売を禁止しながら、未成年者が犯罪で悪用するケースが相次いでいる。主な入手先はインターネットとみられ、大阪府高槻市のマンションで2月、17歳の少年が住人女性を殺害した事件でも、所持していた特殊警棒はネット通販大手「アマゾン」で購入したものだった。未成年者がネットで凶器を容易に入手できる状況が放置され、警察幹部は「規制強化が必要だ」と危機感を募らせる。
特殊警棒にスタンガン、手錠-。高槻市の少年が元同級生宅を襲撃した現場には、複数の凶器や拘束用具が残されていた。少年は元同級生の母親=当時(40)=を自作の筋弛緩剤(きんしかんざい)を投与して殺害し、自らもナイフが刺さって死亡。供述を得ることはできなかったが、捜査関係者によると、少なくとも特殊警棒の購入先がアマゾンだったことが確認された。
特殊警棒は強く握ると金属棒が伸びる仕組みで、伸ばした状態だと殺傷能力を持つ。凶器にもなるため、都道府県の多くは青少年健全育成条例で有害玩具刃物類に指定するなどし、18歳未満への販売や貸し付けを罰則付きで禁止している。
大阪府の場合、有害玩具は特殊警棒のほか、バタフライナイフや空気銃、クロスボウ(ボーガン)、手錠など11種類。他府県ではサバイバルナイフや催涙スプレーなども指定している。
アマゾンは取材に「年齢制限のある商品は、法規制を遵守し、年齢確認など必要な対応を実施している」などと回答。事件に使われた特殊警棒の取り扱いについては言及を避けた。
規制があるとはいえ、未成年者がネット通販で購入した凶器で事件を起こすケースは後を絶たない。
愛知県弥富市の市立中で昨年11月、3年の男子生徒=当時(14)=を同学年の少年が包丁で殺害。今年1月には、知人男性を殺害するためナイフを購入したとして、大津市の16歳の女子高生が殺人予備容疑で逮捕されたが、いずれも凶器は「ネットで購入した」と供述していた。
ある大手通販サイトは、有害玩具の閲覧前に18歳以上かどうかの質問に「はい」「いいえ」を選ぶだけで、身分を偽れば容易に購入できる。別の通販サイトは身分確認もなく購入することが可能で、未成年者にとってネット通販が〝抜け穴〟だらけとなっている。
店舗とネットで特殊警棒を販売する大阪市内の専門店の関係者も「対面なら直接確認できるが、ネットでをつかれたらどうしようもない」とぼやく。
現行条例、大阪府「時代に即さず」
各都道府県では、未成年による凶器を使った事件が起きるたび、育成条例の有害玩具指定を増やすなどしてきた。ただ、各条例は店舗での対面販売を想定し、大半はネットでの販売規制を明記していない。
大阪府の場合、条例で有害玩具を初めて指定したのは、ネット通販が存在していなかった昭和59年。以来、約40年にわたってネットに関する規制は一度も強化されておらず、府の担当者は「(現行条例は)正直、時代に即していない」と打ち明ける。
高槻の事件を受け、大阪府警の複数の幹部は、育成条例の実効性がネット通販に対して低いことを懸念。府に規制強化を働きかけたが、府側の腰は重い。
府側は理由として、①ネット通販は全国を販売対象とし、条例では規制しにくい②購入者が18歳以上と偽った場合、販売側の法的責任まで問うのは厳し過ぎる-といった点を挙げる。ネット事業者に対するチェック強化の要請にも、担当者は「するかどうかは分からない」と歯切れが悪い。
一方で、育成条例に有害玩具のネット規制を明記した例もある。鳥取県は令和2年10月、有害玩具を「インターネット上から未成年に入手させた」事業者も罰則の対象になると追加。抑止効果も期待し、県のホームページには保護者に監督を求める一文も添えた。
府警幹部は「ネット通販が主流の今、凶器のネット売買を規制強化しなければ、未成年者でも簡単に手に入れられる状況が続いてしまう」と訴えている。(中井芳野)